功なり名を遂げ、栄華を極めた大物政治家や財界のトップが辿りつく最高の誉れ“勲章”。5月9日、春の叙勲の大綬章勲章親授式が宮中「松の間」で行なわれたが、そもそも勲章はどうすれば貰えるのか?
最高ランクの大綬章ともなれば宮中に参内し、天皇から直々に下賜される。選ばれし者だけが手にできる栄誉であることに異論を挟む余地はないが、見果てぬ夢のまた夢と諦めるのも早い。
春秋叙勲だけでもそれぞれ約4000人、危険業務従事者叙勲や高齢者叙勲なども合わせると、年間受勲者は2万人を超える。そもそも勲章授与で重んじられるのは「国家又は公共に対する功労」。たとえ無名であっても勲章を貰えるチャンスはある。覚えておきたいのは、一部の例外を除き70歳以上が対象であるということ。70歳を超えたら「勲章適齢期」となる。
春秋勲章は「大勲位菊花章頸飾」を筆頭に22種類に及び、勲章ごとに叙勲対象が大別されている。たとえば、「旭日章」はおもに政治、経済・産業界の功労者。大綬章ともなると、過去の受章者の顔ぶれは銀行、鉄鋼や自動車など重厚長大企業の経営者が並ぶ。「勲章適齢期」を迎える大企業トップの中には、政治家に働きかけたり、突然メセナ活動に力を入れたりと、やおら下準備にいそしみ始めるというのだからその価値がいかに高いかわかろう。
さすがに大綬章はハードルが高いが、小綬章以下であれば選定条件は都道府県レベルにまでハードルが下がる。全国各地の医師会や商工会、各種業界団体やスポーツ団体でトップを務めれば、受章のチャンスは格段に上がる。
一方、おもに公務員を対象にした「瑞宝章」は、退官時の役職により受けられる勲章のランクがほぼ決まる。こちらも小綬章以下の選定条件は都道府県レベルになり、公立学校長、県警や消防、郵便局や税務署、公立病院などでの重職経験者に加え、保護司や民生委員を長年務め上げた人々も有資格者の仲間入りである。
なお、勲章の受章者選定は、地方自治体や各種団体が挙げた推薦者を、所管する省庁が候補者としてまとめ、賞勲局が審査するという流れで進む。あまり知られていないが、2003年より一般からの推薦も受け付けており、門戸は広がった。
その際、功績や経歴は無論だが、刑罰などの「身体検査」も行なわれるので素行が問われることを肝に銘じておきたい。今や平均年齢が80歳を超える「人生100歳時代」。最後の目標を“勲章”としてはいかがか。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2014年5月23日号