テレビ局の番組制作会社のホームページを見ると、制作実績の欄に『情熱大陸』と書いているケースが頻繁に見受けられる。『情熱大陸』といえば、TBS系で放送中(日曜23時~)の人気ドキュメンタリー番組だが、なぜこんな現象が起こっているのか。テレビ局関係者が話す。
「通常では、1つの番組に多くの制作会社が名を連ねるケースはほとんどありません。局が制作会社を競わせる目的で、1週目がA社、2週目がB社、3週目がC社……というように持ち回りにすることはあります。
ただ『情熱大陸』の場合は、間口を大きく開けている。特定の会社に作らせると決めているわけではなく、良い企画があれば、いつでも持ってきてくれという態勢。だから、それだけ多くの制作会社が『情熱大陸』を作っており、実績として載せているわけです」
マスコミ志望の学生が就職活動の際にホームページを見て、『情熱大陸』を作りたいと意気込んでその制作会社の門戸を叩いても、実は過去に1本しか作っていない可能性もある。
「自分に本当に力があれば、企画は通りますよ。ただ、当たり前ですが、何本も作っている会社のほうが企画は通しやすい。『情熱大陸』を作りたいテレビ屋は数え切れないほどいるので、制作会社同士の競争が激しい。日本一と言っても過言ではありません。
『この人で作りたい』は誰でも言えるので、『この人を使って、こんな絵が撮れます』というコンペになりますね。人脈が大事です。あらかじめ、何をできるか明確にしないと、ゴーサインは出ません。最初の構成が重要ですね。
たとえば、4月27日の放送では、阪神の藤浪晋太郎が“肉体美”と“100万円スーツ”を見せた。この2つの要素があったからゴーサインが出たのではないでしょうか。普段見せないものを見せることで、番組としての価値が上がるわけです。
このように、有名人が出るときは、関係性が特に重要。『やっぱり、あのシーンはNGで』なんて言われたら、構成が全て壊れますから。事前に確証を取れる関係性がないといけません」(同前)
ドキュメンタリーの場合にも当然、制作側と被写体の駆け引きは存在する。こうした制作会社の切磋琢磨により、日曜夜の『情熱大陸』は月曜から仕事に向かうサラリーマンに1週間の活力を与えている。