中国の李克強首相が4日から11日までエチオピアなどアフリカ4か国を歴訪したが、今回の外遊には、これまで一切公の場に現れたことがなかった程虹夫人が初めて同行し、外交デビューを果たした。
習近平国家主席の彭麗媛夫人はファーストレディとして、これまでも何度も習氏の外遊に同行したり、北京でも外国要人との重要な会合に出席するなど外交の舞台で華やかに活躍しており、今回の程虹さんの外交デビューは中国の“夫人外交二枚看板”の競演を占う旅になりそうだ。
中国では最高幹部の夫人の動静については、控えめに報じるのが通例だが、今回の程さんの外交デビューについては、中国国営新華社通信や中国共産党機関紙「人民日報」が大々的に報じている。
同紙は程さんの顔写真付きで、略歴を詳しく報道。中国の報道機関が「李首相夫人は程虹さんである」ことや、程さんの略歴自体を伝えることも初めて。
それによると、程さんは1957年生まれで、1982年に大学卒業。文学博士で、首都経済貿易大学外国語学部で30年あまり教え、いまは教授を務めている。専門は英語で、同大の学術委員を務め、米国の自然主義文学の著作を紹介したり、翻訳で多くの業績を上げている。程さんは北京大学で李克強首相と知り合い結婚し、一人娘がいるという。
これまでも、程さんの略歴は香港メディアに紹介されてきたが、同大の学術委員を務めたり、米国の自然主義文学の専門家というのは新しい情報であり、中国の官製メディアとしては踏み込んだ報道といえそうだ。
だが、李氏が首相に就任してすでに1年以上経ったいま、それまでまったく明らかにしてこなかった程さんの略歴などを公表する必要があったのか。不思議といえば、不思議だ。
実際、李首相の前任の温家宝首相は首相在任中1回も張培莉夫人を外遊はおろか、公の場で同席したことはなかったほどだ。張夫人は宝石商として商取引に絡み不正疑惑が取り沙汰されたことも大きな理由だろうが、張さんの例から、首相夫人だからといって、夫のために公式行事に出席する必要はないという例も成り立つ。それではなぜ、程さんがいま突然、前触れもなく公の場に登場したのか。
これについて、中国情勢に詳しいジャーナリストの相馬勝氏が解説する。
「まず、李氏の習氏への政治的対抗心が挙げられる。中国では経済政策は首相の専権事項だったが、習氏は経済政策に口をはさみ、経済運営のイニシアチブを我がものにしている。李氏はつねにナンバー2で、習氏の陰に隠れて、まったく存在感を示すことができない。
一方、習氏の彭麗媛夫人も外交を舞台に華々しく活躍をしていることから、李氏は程夫人を中国のファーストレディの2枚看板として対抗させ、あわよくば政治の主導権もある程度は習氏から奪い取ろうという思惑が働いているのではないか」