梅雨入りシーズンでジメジメと蒸し暑い日が増えてきた。クールビズは10年目を迎え、サラリーマンの夏スタイルも昔に比べれば涼しげにはなったものの、やはり汗対策は欠かせない。
クールビズ商戦で毎年売れ行きが注目されるのは、より清涼感を高めた機能性肌着だ。
“空気のように軽い”をコンセプトにしたユニクロの肌着『AIRism(エアリズム)』は、年間5000万枚規模の売り上げを誇るヒット商品。吸水性などのドライ機能に加え、生地に付着した汗や加齢臭の消臭効果も謳い、さらなる販売増を狙う。
大手小売りも負けていない。イオンでは機能性素材を使ったPB(自主企画)商品を『トップバリュ ピースフィット』として一新。通気性にも優れた除湿インナーのCMを大々的に打ち出し、前年同期比1割増の販売を目指している。
その他、紳士服のAOKIが信州大学と共同開発して昨年から売り出している『ドライコントロール肌着(空冷肌着)』の品質訴求を強化したり、肌着メーカーのグンゼやワコールもこぞって機能性肌着を進化させたりと、市場は群雄割拠でヒートアップしている。
しかし、各社の意気込みとは裏腹に、男性肌着市場は頭打ちの状況といえる。民間調査会社の調べでは、2013年の市場規模は5年ぶりのマイナス成長で、今後も伸びは鈍化するだろうと予測されている。
機能性は年々高まっているのに、需要が伸び悩んでいるのはなぜか。繊維業界に詳しいファッションジャーナリストの南充浩氏が分析する。
「ここ数年、夏は<吸汗・速乾>、冬は<保温・発熱>などの機能を競ってきた肌着ですが、どの商品を買ってもそれほど違いが分からないレベルになってきたことが挙げられます。また、すでに機能性肌着の購入者層が一巡して、買い替え需要がなかなか進まないのも大きな理由です」
しかも、最近の消費者が肌着を購入するポイントは、機能性とは逆行してきたと南氏は指摘する。
「ポリエステルやレーヨンなど合繊素材を使った肌着は、確かに機能性は格段に上がりましたが、合繊独特の肌触りが嫌いという人も多かったのです。長時間着るならば、多少汗の乾きは悪くても、綿100%など天然素材がいいという嗜好に戻りつつあるのです」
天然素材を求める消費者ニーズは売り手側も先刻承知。ユニクロやイオンでは合繊繊維の肌着とともに、米国産の高級綿「スーピマコットン」を使った商品も拡充している。