地震学の専門家ではない──ただそれだけで存在を無視され続けてきた異端の東大名誉教授が、実績によってその評価を覆しつつある。測量学の世界的権威である教授は、5月に入って首都圏を襲った2度の地震の発生を予測。いずれも自らが配信するメルマガで事前に注意を呼びかけ、見事に的中させた。「3.11のあの日のような想いはしたくない」そう語る老研究者の努力が、結実しようとしている。
本誌前号の発売直後から、編集部の電話は鳴り止まなかった。前号のトップ記事で報じた〈なぜ異端の東大名誉教授だけが東京直撃地震を予測できたのか〉について問い合わせが殺到したのだ。
この記事は、5月5日の早朝午前5時18分に首都圏を直撃した地震(東京・千代田区で震度5弱)を、唯一予測していた人物を特集したものだ。
その人物の名は、村井俊治。東京大学名誉教授で、民間会社JESEA(地震科学探査機構)の顧問として活動している。村井氏は、同社が配信するメールマガジン「週刊MEGA地震予測」において、4月9日、16日、23日と3回にわたって首都圏で地震が発生する可能性について言及していたのである。
そして、さらなる「セカンドインパクト」が起きたのは、そんな大反響の最中の出来事だった。
前述の首都直撃地震からわずか8日後の5月13日午前8時35分、再び首都圏を地震が襲った。埼玉県南部や神奈川県東部で震度4を記録。東京都でも震度3を記録した。
この2度目の首都圏地震がもたらした衝撃は、震度だけでは測れないものがあった。なんと村井氏は最新のメルマガで、首都圏でのさらなる地震発生の可能性について言及しており、その予測がまたしても的中した格好になったのだ。
5月7日に配信されたメルマガでは、〈首都圏は要注意〉と「要注視」からより切迫度の高い「要注意」へ警戒度を引き上げたうえで、〈累積歪の大きさから判断すると引き続き注意をしておいたほうがいいでしょう〉と、首都圏の危機がまだ去っていないと強調していた。
メルマガ配信の6日後に、予測は現実のものとなった。揺れの最中、前号記事の見出しにあった一言が頭をよぎった人もいたかもしれない。「この人は本物だ!」と。
※週刊ポスト2014年5月30日号