シニアの再婚が増えている。「人口統計資料集」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、50歳以上の再婚者数は2012年時点で男性が2万669人、女性が1万1973人に上る。1990年の男性1万1276人、女性5331人と比べると、この20年余りでほぼ倍増している。
一昔前なら「いい年をして今さらみっともない」などと後ろ指をさされることも多かった熟年再婚だが、シニア向け婚活市場は活況を呈している。
婚活サイトに登録したり、婚活パーティに積極的に参加したりするシニアも多く、業界では「高齢者専門婚活業者」も次々と誕生しているのだ。
2005年にスタートした中高年専門結婚相談所「アイシニア」、札幌や福岡などにも中高年向け結婚相談所を展開する「太陽の会」や関西を中心に活動する「無限の会ゆうゆうM」といった老舗をはじめ、医者・弁護士などエグゼクティブ専門の業者まで登場するなど、シニア婚活市場は着実な広がりを見せている。
離婚や死別を経験したシニア男性が婚活に行き着く理由で最も多いのが「独りで死にたくない」(60代男性)といった孤独感からくるもの。
続いて「身の回りの面倒を見てほしい」(50代男性)から「家の継承」(70代男性)、「一族の墓の管理をしてほしい」(50代男性)といった声も聞かれる。
いうまでもなく、60代はまだまだ“現役”であり、むしろ若い世代よりも結婚願望が強い人が少なくない。
60代半ばのある会社経営者もそのひとりだろう。
自身は仕事中心の生活に邁進し、家事や育児など家庭のことは妻に一切任せてきた。その妻が病で倒れて亡くなり、それからわずか2週間後、結婚相談所に入会した。仕事以外はほとんど何もできない彼は、なんと秘書を通じて申し込んだという。
その理由は明快だった。
「今まで家庭のことは何もやってこなかったから、この先どうしたらいいかわからない。家事だけなら家政婦でもいいじゃないかと割り切ろうとしたけど、そうじゃない。この先の人生を考えると、やはりさみしいんだ」
会社を経営する彼には部下もたくさんいるし、社外との付き合いもある。独立したとはいえ、子供もいる。それでもふと家でひとりになると、さみしさが募るというのだ。
経営者だけに決断も早く、入会から3か月で結婚を決めた。相手はホテルのラウンジでお見合いをした50代半ばの女性会社員だった。
この結婚を仲介した中高年専門結婚相談所「アイシニア」代表の池田淳一氏が語る。
「その方だけに限らず、前の婚姻関係が終わってから入会までの期間は男性の方が圧倒的に早い。それだけさみしさに弱いといえます。一方、女性は5年から7年ほど経ってから婚活する傾向にあり、その理由は経済的な不安を拭いたいというものが目立ちます」
※週刊ポスト2014年5月30日号