「人口統計資料集」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、50歳以上の再婚者数は2012年時点で男性が2万669人、女性が1万1973人に上る。1990年の男性1万1276人、女性5331人と比べると、この20年余りでほぼ倍増している。
しかし、再婚が急増しているといっても、再婚願望を抱くシニア男性の中でそれをかなえられる人は決して多くはない。なぜなら、立ちはだかる「壁」がいくつもあるからだ。
たとえばこんなケースだ。60代半ばの男性が前妻と死別後、50代後半の女性と知り合い、再婚に向けて着々と話を進めていた。ところが、女性が男性の自宅を訪ねると思わぬ光景に出くわす。亡き妻の遺骨が置かれていたのだ。
「前妻から『お骨はお墓に納めずにそばに置いてほしい』といわれていた。その約束は何としても守らないと天国の前妻に申し訳が立たない」
などと説明する男性に対し、女性は「前の奥さんを大切にする姿勢は理解できるけど、いつまでも遺骨をそばに置いておくというのは、私は心情的に無理」と考えるようになり、結局は破談になってしまった。
そしてシニアの再婚で、必ずといっていいほど直面するのが「子供の反対」である。
「娘から『お母さんを見捨てるんだね』と反対されて泣かれてしまった。何度も説得したが、娘は頑なな態度を崩さず、結局籍を入れるのはあきらめました」(60代男性)
感情的な理由だけでなく、遺産や年金などおカネを巡る現実的な壁も大きく立ちはだかってくる。
16歳年下の女性と再婚を決めた70代の男性は、2人の息子から猛反対に遭った。
男性宅で開かれた家族会議の場で、50代前半の長男夫婦と40代半ばの次男夫婦は、「籍を入れなくても、一緒に暮らすだけでいいじゃないか」と繰り返した。はっきりと口には出さないものの、「どうせ親父の財産狙いだろう」という態度がありありだった。
同席していた女性はすっかり嫌気がさしてその場を立ち去ったが、幸いにも男性はここで決断する。「僕の結婚だから、息子たちにとやかくいわせない」と、自分たちが住む自宅だけを残し、残りの財産は生前贈与の形で息子たちに渡したのだ。
その後、息子たちとはわだかまりが残ったものの、夫婦仲良く暮らしているという。
※週刊ポスト2014年5月30日号