いまやメジャーを代表するエースと呼べる活躍のダルビッシュ有と田中将大。芸術家肌のダルに対し、「まさお」とニックネームをつけられるなど、「いじられキャラ」としても処世術に長けた田中。こうした違いは、チームメートや米メディアも感じているようだ。MLBの現地解説者はこう話す。
「レンジャーズは2年連続でワールドシリーズに進出し、満を持してダルビッシュを獲得した。優勝請負人としての役割を彼に期待したのです。しかし、この2年間はプレーオフ出場すら逃し、チームの成績は下降線。そうなるといくら個人成績を残していても、運のない“ハードラック・プレーヤー”といわれかねない。これに対し、投げれば負けない田中は“ラッキーボーイ”だという印象が、首脳陣や選手、ファンの間にも定着しつつあります」
さらに田中には、“いじられキャラ”という得な面もある。WBC日本代表では、仲間から「マサオ」というあだ名で呼ばれて愛されていたが、ヤンキースでも変わらないようだ。
「キャンプの1マイル走(約1600メートル)で足が遅いことをNYメディアが書き立てると、同僚のサバシアがジョークにしてからかっていましたね。それに新婚で入団してきたのも大きい。離婚したダルビッシュはなかなかいじりづらいでしょう」(同前)
実力はともに申し分ないものを持ちながら、何か異なる境遇にある2人の選手。
「例えるならば、田中はヤンキースの大先輩である松井秀喜タイプ。ダルビッシュはイチロータイプであるといえます。数字はイチローに見劣りしても、松井は首脳陣にもメディアにも高く評価された。それは松井が“僕はブルーカラーですから”とチームバッティングに徹し、打点や出塁率でチームに貢献していたからです。
黙々とチームの勝利のために仕事をこなす田中と、投手としての高みを目指し続けるダルビッシュに、かつての松井とイチローの関係に近いものを感じますね」(スポーツジャーナリスト・古内義明氏)
いつ完全試合を達成してもおかしくない風格を漂わせるダルビッシュが、我々日本人にとって誇りであることは間違いない。一方で、そのダルビッシュの快投に「僕にはできない。泥臭く勝つだけです」と語る田中も同様だ。まだまだ2人のメジャー人生は続いていく。最後に大きな成功を収めるのは、果たしてどちらか。
※週刊ポスト2014年5月30日号