田村憲久・厚生労働大臣は5月13日の閣議後会見で、受給者の選択によって年金受給開始年齢を75歳まで遅らせて繰り下げ受給ができるようにして、その分、金額を割り増す制度を検討することを表明した。
田村大臣がいくら「選択制にする」といっても、まともに計算すれば、自分が平均寿命よりどれだけ長く生きることができるかを賭ける “ハイリスク・ローリターン”のギャンブルのような「75歳支給」を選択する人がそうそういるとは思えない。
それなのに、なぜ、厚労大臣は国民が選択しそうもない年金の「75歳選択支給」をぶちあげたのか。
政府の年金記録回復委員会の委員を務めた特定社会保険労務士の稲毛由佳氏がその狙いをこう指摘する。
「現在、年金の受給開始を遅らせて割り増しを受ける繰り下げ受給は70歳までしかできません。それを75歳にしようというのは、70歳を過ぎても働く人が増えることを想定していると思われます。しかし、いまの制度のままでは国民に75歳受給にメリットはありません。
政府が75歳受給の人を増やすためには、割増率をもっと上げるという“アメ”を与えるか、逆に、働きながら受給できる在職老齢年金を大きくカットするという“ムチ”を入れるか、2つの方法があります。年金財政を考えるとこれ以上割増率を引き上げるとは考えにくいため、在職老齢年金のカットの方向になっていくのではないでしょうか」
まさに「働く高齢者」に対する年金カットこそ、厚労省の企みなのだ。
※週刊ポスト2014年5月30日号