犬の散歩は飼い主ではなく犬の健康のため。だから、適正な時間と距離はどのくらいなのかと気にする人にとって、飼育本に書かれている目安は重要だ。Can! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する西川文二氏が、適正な犬の散歩時間について解説する。
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いやぁ、風薫る良き季節になりましたな。犬との散歩も楽しさひとしお、ってな感じでは?
そういえば犬の散歩って、大型犬は1日ウン時間必要、小型犬はウン十分で充分、なんて飼育本なんかには書かれてる。目的別に改良されてきた犬、その種類の違いで語るならわかるけど、サイズの違いで、ってのは意味がわからん。
カラダの大きい個体の方が、運動をたくさんしないといけない。納得しちゃいそうだけど、ちょっと変。カラダの大きい人の方が小さい人より、たくさん運動しなくちゃいけない、ってことはない。
自らのカラダが負荷となる運動は、大きなカラダを動かすのにその分エネルギーを必要とするわけでしてね。必ずしもカラダが大きいからといって、その分たくさんしないといけない、とはならん。
健康のためには1日1万歩歩くといいんですけどね、そこの猫ひろしさんはえ~とちっちゃいから1日5千歩でいいですよ、ああ、そっちの大きなチェ・ホンマンさんは……う~ん1日2万歩ね、ってなことにはならない。
それと散歩ってのは運動のためにだけするわけじゃあない。脳に刺激を与える、ってな重要な意味もある。これまたカラダのサイズにゃ関係ない。
そもそも人間につきあっての散歩なんて、犬にとって必要十分な運動になってるのか? なんてったってマイペースでなら、何時間でも歩き続けられるらしいですからね、奴らは。
まっ、かように犬に必要な散歩量なんて、よくわかっちゃあない。ならば飼い主の健康にいいって量でいいじゃん、ってな発想もあり。
グレートデンを従えた猫さんも、チワワに率いられてるチェさんも、健康のために1日1万歩を目指す。
千里の道も1歩から、万歩の道はワン歩から。さぁ、この良き季節から始めましょ!
※週刊ポスト2014年5月30日号