「人口が減少する」との未来予測に伴い、自民党は移民受け入れの具体策の検討に入った。しかし移民受け入れを論じる上で避けて通れないのが、在日コリアン(約53万人)、在日中国人(約65万人)関連のイシューだ。
2007年以降、在日コリアンを抜き在留外国人人口トップとなった中国人は地域社会でさまざまな問題を抱えている。住民5000人中、3割以上が中国人という埼玉・川口芝園団地の住人は「言葉の壁によるトラブルもある」と話す。
「店頭で量り売りしている黒豆や大豆を勝手に食べる人がいるんだよ。注意しても言葉が通じないから困ってる」(団地敷地内の商店主)
文科省は今年度より公立小中学校の外国人生徒を対象に日本語指導のカリキュラムを強化した。それでも4割が日常生活や学習で言葉に不自由するレベルという。また、団地の掲示板や建物の至る所に〈エレベーター内禁煙〉〈ゴミは指定の場所に!〉と中国語の注意書きがあるように、中国人のマナーの悪さを指摘する声も多かった。
「タバコのポイ捨てや騒音など数えれば切りがないが、ゴミ捨てのマナーは何度言っても守られない。可燃、不燃の分別もないし、粗大ごみの不法投棄も日常的です。そうした粗大ごみの処理代は共益費から出すようになるので、いい迷惑ですよ」(60代男性)
そんななか、住民は試行錯誤しながら在日外国人との共生を図っている。しかし、ここでも排外主義との“内なる対立”が問題を複雑にしている。在特会は中国人に対しても排斥行為を行なっており、東京・池袋西口などで尖閣諸島や中国本土の反日に抗議するデモが行なわれ、ヘイトスピーチを繰り返してきた。ジャーナリストの安田浩一氏が語る。
「結局、在特会のような人たちは不満のはけ口としてマイノリティや弱者を標的にしている。街宣デモに文句を言ったお年寄りを押し倒して足蹴にしたり、ヘイトスピーチ反対派のビラを見ていた男性が模造刀で切りつけられるといった事件も発生しています。彼らはナチスのハーケンクロイツを掲げ、笑いながらデモ行進することもある。騒ぎ立てることでカタルシスを感じているようにしか見えません」
移民を受け入れるかどうか以前に、日本を誰も来たがらないような差別国家にしてはならない。
※SAPIO2014年6月号