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米経済学者「日本は3・11以降、リスク取る姿勢が戻ってきた」

 米国の名門ビジネス・スクールであるハーバード大学経営大学院(以下、HBS)の教授陣18人が3月末から4月初旬にかけて、日本企業の現場視察や経営者への面会を行ったという。

 その目的は、講義の教材や論文の材料を集めることだが、これほどの規模の来日は長い歴史をもつ同校でも初めてだという。

 詳しい視察内容は極秘とされたが、本誌は彼らが回った企業名を入手。新幹線の清掃を行うJR東日本テクノハートTESSEIや、世界初のサイボーグ型ロボット「ロボットスーツ・HAL」を開発したサイバーダイン、「ウルトラテクノロジスト集団」を自称するチームラボ、そのほか楽天の名もあった。

 さらに、HBSの目は東日本大震災の被災地での起業にも向けられた。ひとつは、高品質の手編みのニット商品をインターネットで販売する気仙沼ニッティング。元マッキンゼー&カンパニーの御手洗瑞子社長が、魚網を編む手法に着目して起業した会社である。

 もうひとつは、宮城県亘理郡山元町に設立された農業生産法人GRA。岩佐大輝代表は同町出身で、グロービス経営大学院でMBAを取得した後、東京でITコンサルタントとして働いていた。

 だが、特産物であるイチゴ栽培ハウスの9割が壊滅的な打撃を受け、高齢化した生産者による立ち直りが容易でないことを目の当たりにし、自らIT制御システムによるイチゴ栽培を手がけたという。

 HBSがこれらの被災地起業にスポットを当てたことについて、神戸大学経済経営研究所リサーチフェローの長田貴仁氏はこう説明する。

「彼らが被災地に着目しているのは、企業の利益よりも社会問題の解決を優先するソーシャルビジネスが注目されているからでしょう。また、ソニーやホンダも元はといえば戦後の焼け跡のなかから立ち上がったベンチャーだった。

 こうした『裸一貫』から短期間で大きくなったグローバル企業は海外では少なく、そこに『日本の叡智』のようなものを感じている海外の経営学者は多い。東北で立ち上がったベンチャーの姿に、かつてのソニーやホンダを重ね合わせ、その知恵を探ろうとしている側面もあるのではないか」

 小泉政権時代に日本の経済産業研究所に所属していた日本通の経済学者、デヴィン・スチュワート氏は、大震災後の日本の変化についてこう語る。

「日本を訪問して経営者にインタビューしていると、3・11以降、日本で新たに起業家精神が生まれていることに気づく。地震と津波という大災害によって、日本にリスクを取る姿勢が戻ってきているように感じる」

※週刊ポスト2014年5月30日号

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