米国の名門ビジネス・スクールであるハーバード大学経営大学院(以下、HBS)の教授陣18人が3月末から4月初旬にかけて、日本企業の現場視察や経営者への面会を行ったという。
その目的は、講義の教材や論文の材料を集めることだが、これほどの規模の来日は長い歴史をもつ同校でも初めてだという。詳しい視察内容は極秘とされたが、本誌は彼らが回った企業名を入手した。
世界初のサイボーグ型ロボット「ロボットスーツ・HAL」を開発したサイバーダインや「ウルトラテクノロジスト集団」を自称するチームラボ、楽天などのほか、東日本大震災の被災地企業にも向けられた。
さらに今回の来日は、日本企業の新しい組織形態を視察することもテーマの一つだったようだ。
“面白法人”を自称するウェブ制作会社のカヤックは、サイコロを振って給料を決めたり、社員の似顔絵を描いた漫画名刺を使ったりするユニークな制度を導入している。
「うちはフラットな企業で、ルールをできるだけなくしたいと思っている。普通の会社組織の特徴である“ピラミッド型”を極力廃し、ワンマン経営にならないように、代表取締役は私を含めて3人います。
それは面白いことを生み出していきたいから。社員が200人規模もの会社でこういう組織運営をするのは簡単ではありません」(カヤック代表取締役CEO・柳澤大輔氏)
また、GEの副社長からLIXILグループの社長兼CEOに転じた藤森義明氏にも面会した。企業を渡り歩く「プロのCEO」が日本企業に根付くかどうかという視点で、HBS教授陣は興味を抱いていたという。
1979年にハーバード大学教授のエズラ・ヴォーゲル氏が著わした『ジャパン・アズ・ナンバーワン』をきっかけに、日本経済の躍進はエコノミックアニマル、護送船団方式、年功序列で説明され、「ニッポン株式会社」なる言葉も誕生した。
それから35年。日本はまったく違う視点で再びグローバルビジネスの“中枢頭脳”から注目を浴びている。
※週刊ポスト2014年5月30日号