私立品川女子学院(東京・品川区)では昨年度から、高等部2年生を対象に年4回、家庭科の授業で「お金の教養講座」を実施している。同校は経済教育に力を入れており、これまでもメーカーと組んでお菓子を開発したり、マーケティングを授業に取り入れたりしてきた。「お金の教養講座」を始めたのは、生きていくうえで絶対に必要なお金について正しく理解するためだ。
講師を派遣している「ファイナンシャルアカデミー」代表の泉正人さんは、学校でお金の教養を学ぶことの意味をこう話す。
「お金について家庭や学校で教えてくれるのは、節約し貯金することだけ。どう使えばいいのか、どのように管理するのか、どう増やすのかについては、まったく教えてくれません。授業では社会に出たときに賢い消費者になれるように、お金の多面的な見方を伝えています」
では気になる授業をのぞいてみよう。
牛乳瓶のふたが学校で大流行。ふたと鉛筆を交換するなど、ゴミであるはずのふたがお金のように流通する。しかしあるとき、これが無価値であることにみんなが気づくというお話。ものの価値を見極める力が必要と説く。(授業の資料より・以下同)
そもそも、お金とは一体何なのか?「お金の教養講座」はそこからスタートする。
まずはアンケートで生徒たちに最近した大きな買い物を書いてもらい、それを匿名で発表する。すると、誰が書いた答えなのか、生徒たちにはおおよその見当がつく。例えば、ギターやCDを買った人なら音楽が好きなAさん、洋服を買った人ならファッションが好きで流行に敏感なBさん、というように。つまり、お金はその人を映す鏡。お金の使い方を見れば、その人の行動やライフスタイル、趣味嗜好、考え方もわかるということだ。
友達にお金を貸したことがあるという生徒に、貸した理由を尋ねると「いつも返ってくるから」「宿題をきちんとやる真面目な子だから」という答えが返ってきた。これは、友達の過去の行いの積み重ねが信用をつくったことを示している。信用があるから、お金を借りることができる。
この考え方は、経済の世界でも変わらない。金融機関がお金を貸すときに何を見るかといえば、仕事や貯金、資産など、過去の行いから信用できる人かどうかを見て、お金を返せる人かどうかを判断する。つまり、“信用=お金を返す力”というわけだ。しかも、信用は金利と深い関係にあり、信用が高ければ金利は低くなり、信用が低ければ金利が高くなる。経済の世界で信用がいかに大切なものかが、よくわかる。
「お金は信用を“見える化”したもの。信用を上げないと給料も高くならないし、信用以上のお金を借りることもできません。信用をつくるために、毎日の生活があるんです」との講師の説明に、生徒も「“提出物を期限までに出せ”と先生に言われることの意味がわかった」と納得顔だ。
※女性セブン2014年6月5日号