平和の党という看板を掲げる公明党だけに集団的自衛権には“断固反対”で連立を組む自民党一致しているように見えるが、その内実は政権与党らしい権力争いと駆け引きが渦巻いている。
集団的自衛権をめぐって公明党内は一枚岩ではない。反対の最強硬派は山口那津男・代表。解釈改憲に前のめりになる安倍首相に「現行の個別的自衛権で対応できる」と何度もNOを突きつけている。それに対して前代表の太田昭宏・国交相は見直しに柔軟とされ、自公協議の責任者である北側一雄・副代表はその中間になる。
公明党はこの9月に代表改選を迎える。いまのところ山口氏の続投が有力とされるが、次期代表の座をうかがう北側氏はここで点数を稼ぎたい。太田氏には内閣改造での留任がかかっている。集団的自衛権への対応が党内の人事や権力争いに直結しているという自民党とそっくりの構図があるのだ。
「創価学会の序列でいえば、3人の中では男子部長、青年部長を経験した太田さんが抜きんでている。北側さんは創価大学出身の弁護士という学会エリート、山口さんには学会婦人部との太いパイプという強みがあるが、2人は学会の専従職員を経験していない。それだけに山口さんは代表続投を確実にするためにも安倍総理を相手に一歩も退かない姿勢をアピールしている」(公明党関係者)
北側氏は逆に安倍首相への接近をはかった。2人は小泉内閣時代にともに閣僚を務めた間柄であり、4月には茅ヶ崎でゴルフを楽しんで親密さをアピールしたのである。自民党との連立維持を最優先に考える多くの幹部も妥協の道を探りはじめ、強硬な山口氏は党内で浮いていた。
※週刊ポスト2014年6月6日号