下馬評通りの強さが見えず苦戦する読売ジャイアンツ。交流戦に入る直前の巨人で目についたのが“猫の目打線”だった。
阿部慎之助は5月1~18日の出場14試合で、4番が4回、5番が2回、6番が8回。他にも、長野久義には5月14日のヤクルト戦で3番を打たせたかと思うと、翌日には8番に下げ、さらに次の日には1番に据えた。
こんな具合で交流戦が始まる前の43試合で、巨人が組んだスターティングオーダーはなんと27通り。交流戦直前は7試合続けてオーダーを変更している。
強打が売りのはずが、チーム打率がリーグ3位と今ひとつなのは、ひとえに打線がつながっていないからだろう。
ただ、今年の阿部は2試合で2本ずつホームランを打ったかと思いきや、途端にチャンスで打てなくなる。これでは監督として、打線をいじりたくなる気持ちも分からないではない。が、それは違うと語るのは辛口評論で鳴る広岡達朗氏だ。
「チームはクリーンアップの3、4、5番、少なくとも3番、4番を固定して、補正するのはその前後。これが勝利のためのセオリーなんです。巨人に3タテを食らわせたヤクルトを見てごらんなさい。戦力的には巨人に圧倒的に劣っているのに、バレンティンを中心によくまとまっている。
確かに原(辰徳)は、これまで素晴らしい成績を残してきた監督です。しかしあまりにも自分の感覚を信じすぎて、打順をいじっているようにしか思えない。その意味で、彼は師である長嶋茂雄に似てきたと思いますね」
長嶋氏といえば、“勘ピューター”と揶揄された長嶋采配が有名。確かに日替わりオーダーにはそれに通ずるものがある。
さらに広岡氏がいうには、一番似てほしくなかった長嶋監督の“持病”「欲しい欲しい病」まで引き継いだと語る。
「大竹(寛)に、片岡(治大)に井端(弘和)……、最近の原はよそのチームの選手ばかり欲しがっている。
そもそも、巨人にはいい素材の選手が集まっているのだから、欲しがる必要はない。事実、巨人から人的補償で放出した広島の一岡(竜司)のように、ちゃんと化ける選手がいる。今の巨人は、選手の本当にいいところを見られていないんじゃないか」
※週刊ポスト2014年6月6日号