約2800万人の人が苦しむ「腰痛」には、科学的に誤った知識が広まっている病気でもある。「とりあえずは安静に」という腰痛治療の“常識”は必ずしも正しくないと、ジャーナリストの鵜飼克郎氏が報告する。
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日本でありがちな誤解が「とにかく安静に」という治療方針だ。
アメリカでは1980年代から日本の常識とは逆の研究結果が出ている。急性の腰痛を発症した際に、2日間だけ安静にした患者群と10日以上安静にした患者群の予後を比較したところ、前者のほうが回復は早かったとする研究があり、同様の結論を示す論文が複数存在する。
「痛くても無理して動け、ということではありません。我慢できる範囲で安静を避けたほうが好ましいのです。ぎっくり腰の場合も同じで、痛みが強くならない程度にストレッチなどをしたほうが改善は早くなります。関節をスムーズに動かすための関節液がよく流れるようになることが理由と考えられます」(白土修・福島県立医科大学会津医療センター教授)
陸上日本代表チームのトレーナーとして選手をサポートしてきたASSA白子鍼灸接骨院の大井和夫院長も「アスリートが腰を痛めた場合、骨折や手術が必要なものではない限り痛くない程度に体を動かすようにします。ジョギングなどを継続して調整したほうが回復は早くなるのです。一般の人であっても、全く体を動かさないような対処法は避けるべき」と説明する。
※SAPIO2014年6月号