韓国のメディアの中でもこと「反日」に関するオピニオンリーダーは、やはり新聞である。韓国の三大紙と言えば、『朝鮮日報』『東亜日報』『中央日報』だが、サムスン系列の中央日報が財界の声を受けてたまに日韓関係改善を呼びかけるほかは、3紙とも連日のように反日トピックが並ぶ。しかも、社説だけでなく通常ニュースにまで、記者のオピニオンが紛れ込むから厄介だ。
たとえば石破茂・自民党幹事長が将来的な多国籍軍への参加の可能性を示唆した発言を取り上げた5月19日付『東亜日報』の記事には、こんな一言が付け加えられている。
〈「集団的自衛権」が許されれば、平和憲法9条によって封印されていた日本の「戦争本能」が蘇る可能性があることを示す〉
さらに同日付には、「拳道をする安重根義士に、米観客らが熱狂」との記事も掲載。米国で開かれた安重根(伊藤博文を暗殺した人物で、韓国では英雄扱い)のミュージカルが人気とのことで、
〈劇中の安重根義士が、刀を手にして空高く飛び降りながら、日本軍国主義の象徴といわれている旭日旗を半分に切るシーンでは、(米国人の観客が)拍手や喚声を送った〉
どこまでが事実でどこまでがオピニオンなのか、判別できないのだ。新潟県立大学政策研究センターの浅羽祐樹・准教授(韓国政治)はこう指摘する。
「韓国のメディアは、自分たちのことをマスコミとは呼ばず、『言論』『言論人』と称します。自分たちが世論を主導するという自負があり、世間からもエリートと見なされている。だから、情報を伝えることよりも、言論、つまり国民をあるべき方向に導くというスタンスが優先されるのです」
※週刊ポスト2014年6月6日号