夏場のコールドドリンクは、より冷えていたほうが暑さも吹き飛ぶもの。ここ数年、ビール・飲料メーカーの夏商戦は、温度帯にこだわった“冷たい戦争”が勃発している。
特にアサヒ、キリンの2大メーカーは、「氷点下」を武器に既存商品の新しい飲み方提案を次々と講じている。
アサヒビールは2010年より主力の『アサヒスーパードライ』がマイナス2℃~0℃の温度帯で飲める「エクストラコールド」を飲食店で提供。4月末時点での取り扱い店舗数は7171店となり、年内に1万店の実現を目指す。
また、同社は阪神甲子園球場で『氷点下のとろけるチューハイ』を先行販売している。これは抽出時に急速冷却できる機械で、従来のチューハイをシャーベット状に半固形化したもの。シャリシャリとしたお酒の新食感が受け、6月より首都圏や近畿圏で拡大販売する予定だ。
対するキリンも負けていない。キンキンに冷えたビールの上にマイナス5℃に冷やしたフローズンの泡を乗せた『一番搾りフローズン<生>』を全国2200店舗の飲食店で提供。冷たい泡の“フタ”がビールの温度を30分間保ってくれるという斬新な発想も受け、「今年は3000店舗まで増やしたい」(広報担当者)という。
さらに、キリングループのメルシャンからは、専用のフローズンサーバーを使ったスムージー状のワイン、『フランジア・ワインフローズン』まで登場。「最近はワインに氷を入れて飲む人も増えたので、夏場の新しい飲み方として定着するかもしれない」(飲食コンサルタント)との声も挙がる。
フローズンブームは外食時の酒類だけにとどまらない。
アサヒ飲料が6月4日から全国約1000店のセブン―イレブンで売り出す『三ツ矢フリージングサイダー』は、パッケージ商品で氷点下をうたう画期的な試みとして注目されている。
セブン店舗に設置した専用の冷蔵庫でマイナス5℃まで冷やした同商品は、消費者がペットボトルを開栓した瞬間に、中身が凍り始めるフリージング現象が発生する仕組みとなっている。
飲料総研取締役の宮下和浩氏は、アサヒの新提案をこう評価する。
「三ツ矢サイダーといえば、発売から120年を迎えるロングセラー商品。しかも、昨年には史上初の4000万ケース(1ケースは500ml×24本)超えを達成するなど、いまだに絶大なブランド力を持っています。
いまさら派生商品を出さなくても売れるはずですが、トクホ(特定保健用食品)やオールゼロ(カロリー・糖類・保存料ゼロ)の新ジャンルを発売してヒットさせるなど果敢にチャレンジしている。今回の“氷点下サイダー”もアサヒの売れ行き次第では、他メーカーが追随してくる可能性はあります」
コンビニ内の「持ち帰り飲料」でいえば、冷凍コーナーで売られているカチカチのお茶やスポーツドリンクが行楽やレジャーのお供として売れていたり、最近ではコンビニコーヒーの進化版としてローソンがフローズンドリンクのカフェラテを発売したりするなど、夏場のライバルは多い。一歩外に出れば、スターバックスの『フラペチーノ』の人気も高い。
さて、大手メーカーが仕掛ける今年の氷点下飲料はどこまで「夏の定番」として広まるか。冷たくも熱い戦いは、これからが本番だ。