宇多田ヒカル(31才)と、イタリア人男性(23才)の挙式当日、『サンタ・マリア・アッスンタ教会』の前には地元メディアだけでなく、新郎新婦をひと目見ようと35km離れた隣町からも大勢の人が集まっていた。
しかし、そんな祝福ムードも新郎新婦が式場にやってくると、事態は一変。ボディーガードが白い和傘を開き、宇多田を隠すようにして教会に入っていく様子に、そこら中で「見えない」と大ブーイングが巻き起こった。
南部イタリアでは家族の結びつきが強く、街中の人が親戚のようなつきあいをもつ。どんな小さなことでも、翌日には街中に流布し、みんなが知るところになるという。
宇多田の“嫁入り”初日はいきなりつまずいた形となったが、実は“南イタリア妻”となった彼女を待ち受ける掟は、他にもこんなにある。
イタリア文化に詳しいエッセイストの田丸公美子さんは、イタリア人男性についてこう語る。
「イタリア人男性と結婚して、まず驚くのがそのマザコンぶりです。毎日マンマ(母)に電話するのは当たり前。しかも、会話の内容は女子会ノリで、その日あったことや、近所の人が今日はこんな服を着てたとか、どうでもいい話ばかり30分以上するんです(笑い)。
来日したイタリア人男性は、空港に着くや“マンマ、今着いたよ”って電話しますし、別のイタリア人男性は飛行機が3時間遅れた時、“これ以上連絡が遅れるとマンマが警察に捜索願い出しちゃう”と言って公衆電話に走ったこともあります(苦笑)。
でもイタリアでは、それは否定的にとられるわけではなく、お母さん思いの優しい子と思われるんです」
宇多田の両親は結婚と離婚を繰り返し、それゆえ彼女は“家族の結びつき”への憧れが強かった。そういう意味で、南部イタリアはまさに“理想”なのかもしれないが、その結びつきはあまりに深いという。
「南部の人は信仰心が厚く、日曜日にはミサに行き、昼ご飯には親戚中が集まる伝統も残っています。たとえ別々に暮らしていても、みんな何でもかんでも首を突っ込んでくるので、面倒になってくる人は多いですよ」(前出・田丸さん)
実際にイタリア人を夫に持ち、現在、宇多田の夫の地元と同じイタリア・プーリア州のウエディングコーディネートを手がける『GiApulia』のロベッロ・ユウコさんは言う。
「日曜日になると、親族がアポなしでお茶しにやって来るんです。多い時は10人くらいになるんですよ。何か特別に話したいことがあるわけでもないのに、午後6時頃から長い時は2時間ほどいます」
イタリアはカトリックの国で、結婚が神聖視されており1970年に初めて離婚制度が導入されたほど。現在もその考えは色濃く残っている、と前出の田丸さんは説明する。
「イタリアでは市役所で行う式と教会で行う式があるのですが、教会の場合、神の御許で夫婦になったと認められるため、離婚するのが難しいんです。教会審問といって、何人もの神父さんにずらっと囲まれて、何度も何度も教会に足を運び、神父さんに責められながら、離婚の理由を説明しなければなりません。
そもそもイタリアの法律は、離婚の条件に厳しく、裁判による別居、もしくは裁判所の認可を受けた協議での別居が3年以上継続していることが必要となります。また、その間1度もセックスがないという事実が必要になります。別居中、1度でもセックスしたらそこからまた3年の別居をしなければいけないという話も聞いたこともあります」
※女性セブン2014年6月12日号