巨大家電メーカーの業績が回復に向かう中、一人負け状態のソニー。最近、ソニーの社長兼CEOである平井一夫氏と食事を共にしたある財界人は、次のように語る。
「平井さんは、他の話題のときには笑みを絶やさず、快活に話していましたが、話題がエレキ(エレクトロニクス)部門の立て直し策に及ぶと、途端に顔が曇り、『秘策もなければマジックもない』と淡々と語りました。
『でも、エレキを回復させる(黒字化させる)というのが平井さんの公約でしたよね』と言うと、『エレキだけがソニーじゃない。金融もあればエンタメもあるし、これからは医療にも力を入れたいし……』と話題を逸らすような言い方をし、最後には『エレキ部門をどうするかについては自分一人では答えられない。頑張るだけだ』と言いました」
平井氏は相当悩んでいることが窺えた、とその財界人は話す。5月14日、ソニーは2014年3月期の連結決算が最終的に1283億円の赤字になったこと、2015年3月期も500億円の最終赤字になる見込みであることを発表した。他の大手電機メーカーがいずれも業績を急回復させただけに、ソニーの不振は際立つ。
決算内容を見ると、映画、音楽などのエンタテインメント部門、保険、銀行などの金融部門は利益を出しているが、本業であるエレクトロニクス部門は軒並み赤字。
スマホやゲーム機(PS4=プレイステーション4)も、売り上げは好調だったものの、利益が上がっていない。赤字部門であるパソコン事業を売却し、テレビ事業を分社化することをすでに発表しているが、そうした構造改革はまだ途上にあり、黒字転換の目途は立っていない。
2年前の4月にトップに就任した平井氏の立場は、早くも危ういという。
「この1年で業績回復の目途を立てられなければ、来年は退任に追い込まれる可能性もある」(『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏)
だからなのだろう。5月22日の経営方針説明会で壇上に立った平井氏は、「構造改革をやりきることがなければ中長期的な成長はないと思っています。私の責任としてこれをやりきる所存です」と悲壮な覚悟を述べた。
「口にこそ出しませんが、平井さんの心労はかなりのようです。この1年で物凄く白髪が増えましたねぇ」(全国紙経済部記者)
※週刊ポスト2014年6月6日号