スウェーデンのストックホルムで5月26日から開催されていた日朝局長級協議終了後の29日、安倍晋三首相は「北朝鮮政府との間で、拉致被害者を含むすべての行方不明者の全面的な再調査で合意した」と発表し、経済制裁の一部解除に踏み切った。
官邸にとっては、今回の再調査合意も、今年の3月から動き出した「首相の電撃訪朝シナリオ」の一幕に過ぎない。実は、安倍首相はすでに3月末、政府専用機を運用する航空自衛隊に対して、「北朝鮮へのフライト準備」を指示していた。政府専用機はパイロットから客室乗務員まで全員、空自の隊員で編成される。普段は北海道の千歳基地に待機し、ひとたび命が下ればただちに羽田に向かう。
防衛省中枢筋が明かす。
「官邸からの指示は2つ。第1は、平壌へのフライトシミュレーション。北朝鮮の領空内は普段、日本の航空機は進入できないため、東京から平壌までどんな航路で飛び、その際、他の航空機とバッティングしないようにする調整だ。第2は、2002年の小泉訪朝時のパイロットが手配できるかという照会。彼らのスケジュールを確保しておけという指示だった。官邸は平壌までのフライト経験があるパイロットのほうが安心と考えているのだろう」
※週刊ポスト2014年6月13日号