政府が年間20万人の外国人労働者の受け入れを検討し始めた。保守派には移民政策への反対論が多い。石原慎太郎氏はどう考えるか。
──安倍首相が「外国人材の活用の仕組みを検討」するよう指示した。どう評価するか。
石原:人口は国力と言い換えてもいいものです。このまま人口が減少すれば、国力の低下は必至です。現状がどうにもならないのだから労働力確保のためにも、移民を積極的に受け入れるべきだ。私は10年以上前から移民が必要だと説いてきました。政府の検討開始は遅すぎたくらいです。
外国人技能実習制度の期間延長(現行は3年)を検討するようですが、せっかく日本に来てくれたのに、一生懸命働いて慣れてきたところで「期限が来たから帰れ」と言うのは酷でしょう。日本の生活に溶け込み、日本を愛しているならば、定住する道があってよい。
私は八丈島に行くことがあるのですが、そこに釣り名人の親子がやっているおいしい寿司屋があります。跡取り息子のところに嫁が来なくて周囲が心配していたところ、フィリピン人女性と結婚した。当初は反対していた周囲も1年後、子供が生まれ、奥さんが家族に溶け込もうと努力した結果、今では「こんなに素晴らしい嫁はいない」と実家からも大変信頼されている。これは理想形のひとつです。
──移民反対派には、今でも「日本は単一民族国家」という考え方が根強くある。
石原:それは間違った認識です。日本人の民族的ルーツは東西南北あちこちにある。日本に早くから住んでいたのはアイヌや沖縄人であって、その他の多くはシナ大陸や朝鮮半島から渡来しました。細かくルーツを辿ると、インドやモンゴル、南方のポリネシアやメラネシアにまで及んでいる。沖縄・八重山列島のアカマタ・クロマタや鹿児島・悪石島に伝わるボゼなどの秘祭は、メラネシアのそれと非常に似ています。
私の父はインド系の顔をしていましたし、母は典型的なシナ人の顔つきでした。日本は古来、多様な民族が融合してできあがっているのです。
※SAPIO2014年6月号