認知症高齢者とその予備軍は日本では合わせて862万人、高齢者の4人に1人は認知症になるという。認知症については、アメリカをはじめ先進国で共通の社会問題となっており、世界各国で研究が進められている。そうしたなか、これまで未知の部分が多かった「認知症になりやすい人」の特徴が、科学的にわかってきた。
たとえば2012年、米国ボストン・メディカルセンターの研究チームは、「歩くスピード」と「握力」で認知症になりやすいかどうかがわかると発表した。
「2400人を対象とした11年間に及ぶ追跡調査の結果、歩くスピードが遅かった人は、速かった人に比べ認知症の発症リスクが1.5倍も高かったという。同様に、握力の弱い人ほど、認知テストの点数が低かった。11年という長いスパンの調査研究だけに信頼性が高い。歩くスピードや握力が、大脳の総体積に比例するからです。
ちなみに、これらは脳卒中のリスクとも相関関係があることから、脳の機能が低下し障害が出ているという点で、脳卒中と認知症はその発症リスクにおいて関連性があると考えられます」(医療ジャーナリストの田辺功氏)
また、歯周病にかかっている人は認知症になりやすい、というデータもある。
昨年6月、名古屋市立大大学院の道川誠教授の研究チームは、人工的にアルツハイマー型認知症に罹患させたマウスを用意して2グループに分け、1グループだけを歯周病菌に感染させた。その結果、実験後にマウスの脳を調べると、歯周病になったマウスだけ認知症が悪化したという。
「歯周病菌が脳内で、アルツハイマー病の原因となるタンパク質の増殖を促したということです。また、歯に関しては、残存歯が多いほど認知症になりづらいというデータもあります。名古屋大の調査によると、70歳後半で健全な高齢者が9本に対し、アルツハイマー病の人の平均残存歯は3本、脳血管性の認知症の人でも6本しか残っていなかった。歯を大切にする人は認知症になりにくいということです」(新谷悟・東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長)
※週刊ポスト2014年6月13日号