プロ野球では、オリックスが前評判を覆す奮闘ぶりだ。5月24日には、30年ぶりとなる両リーグ30勝一番乗りを果たした。ブーマーが三冠王に輝き、山田久志、福本豊といった野球史に名を残す選手が在籍していた1984年以来の快挙である。交流戦に入ってからも勢いは止まらず、18年ぶりとなるパ・リーグ制覇も夢ではない。スポーツライターが話す。
「金子千尋、西勇輝、ディクソンの先発三本柱が安定している戦力の充実はもちろんですが、コーチ陣の補強も見逃せません。昨年、日本ハムから福良淳一ヘッドコーチ、真喜志康永守備走塁コーチが移籍。今年は、ソフトバンクから高山郁夫コーチがやってきました。この3コーチは、優勝経験が豊富で、コーチとしての引き出しも多い。
生え抜きのコーチばかりになると、どうしても“球団らしさ”を求めがちになる。他球団から新しい血を流入することで、新たな練習方法が取り入れられたり、考え方一つとっても新鮮な発想が生まれたりする。
選手の陰に隠れて見落としがちですが、優勝経験豊富なコーチの移籍が今シーズンのオリックスを支えているといっても過言ではないでしょう」
プロ野球の歴史を振り返っても、V9巨人・川上哲治監督の下には、現役時代は巨人と縁のなかった中日出身の牧野茂ヘッドコーチがいた。西武の黄金時代も、外部から監督として招聘した広岡達朗氏や森祇晶氏抜きにしては語れない。
もちろんオリックス好調を支えているのは、コーチ陣の補強だけでなはない。選手を見ても、抑えの平野佳寿につなぐセットアッパーの3枚が固定され、抜群の成績を残している。
「佐藤達也、比嘉幹貴、馬原孝浩の3人ですね。なかでも、最近2シーズンほぼ登板のなかった馬原の復活が大きい。元はといえば、昨年ソフトバンクにFA(フリーエージェント)移籍した寺原(隼人)の人的補償で、オリックスに加入した投手。
通常、人的補償を要求する場合、目先の1年にこだわり、即戦力を選択しがちになる。しかし、オリックスは昨年1年間ケガで出られないとわかっている馬原を指名した。その成果が今年になって現れているといえます。
また、正捕手には伊藤光がいるのに、今年あえてソフトバンクから山崎勝己をFAで獲った。2番手捕手が弱かったためです。1シーズンを1人の捕手で乗り切るのは困難。足りないパーツを埋めるため、理にかなった補強です。振り返れば、昨年には、内野の守備固めとして西武から原拓也を獲得している。
中継ぎ、2番手捕手、守備固めという一見、地味な補強を続けたことが実を結んでいるのです」(同前)
コーチ陣から選手まで、それぞれ足りないパーツを補った補強が、オリックス快進撃を支えているようだ。