法人減税をめぐる議論が本格化している。安倍晋三政権は35.64%(国と地方を合わせた東京都の実効税率)から20%台への引き下げを目指して、6月に策定する成長戦略に盛り込みたい意向だ。法人税の何が問題なのか。
日本の法人税は世界と比較すると高い。たとえばドイツは29.59%、中国は25%、韓国は24.2%、イギリスは21%、シンガポールは17%といった具合だ。
企業の負担は税だけではない。社会保険料もある。法人税だけをみると、米国よりは低くなるが、社会保険料も加えると米国より負担が重いという事情もある。
重い負担が外国企業の参入を阻害する要因の1つになっている。日本貿易振興機構(JETRO)が昨年3月に実施した外資系企業調査によると、日本への投資をためらう理由のトップは「ビジネスコストの高さ」だった。法人税と社会保障を合わせた負担の重さを指摘する声はオフィスや用地の取得・賃貸費用の負担感を上回った。
意外に思われるかもしれないが、日本は先進国の中で海外企業の参入が著しく遅れている国である。対内直接投資の国内総生産(GDP)比でみると、先進国は平均で30%を超えているのに、日本はわずか3.4%(2012年)にすぎない。
世界も日本企業の活動もグローバル化しているのに、自分たちの足元をみれば、いまだに「閉鎖的な国」なのだ。こういう現状を打破する方策の1つが法人減税である。
ところが法人減税を唱えると、必ず「家計は増税なのに企業は減税か」とか「いまでも財政赤字が大変なのに、減税すれば税収が減るじゃないか」という声がある。まず、それに答えよう。
たしかに消費税は引き上げられたが、家計の多くを占めるサラリーマンは企業が元気にならなければ結局、所得も雇用も減る。とりわけ外資はもっと誘致できる余地がある。いまは閉鎖性をチャンスに変える好機である。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
※週刊ポスト2014年6月13日号