自民党の日本経済再生本部が安倍首相に提出した「日本再生ビジョン」の地域活性策のひとつ「プロ野球16球団への拡大プラン」が話題だ。そのなかでプロ野球の空白域としてあげられている静岡県、北信越、四国、沖縄県にもし、球団オーナーに名乗りを上げる企業があらわれ、本拠地球場が決まったとしても課題は集客だ。プロ野球はファンが払ってくれるチケット代も大きな収入源である。
プロ野球に関する著書が多いライターの広尾晃氏が、こう分析する。
「球団経営を考えるうえで重要なデータに、ファン人口という数字があります。巨人のファン人口は1003万人、阪神が799万人、最も少ないオリックスで35万人といわれています」
これを新規参入地域で考える。広尾氏によれば、「四国の人口は約400万人で、野球ファンはせいぜい50万人ほどでしょう」という。「プロ野球の採算ラインは年間観客動員150万人」(広尾氏)とのことなので、クリアするには四国中の50万人のファンを、最低でも3回は球場へ連れてこないといけない。人口142万人の沖縄では、相当ハードルが上がることになる。
これはかなり難しい数字だ。そこで他地域からのファンの流入も考えねばならない。そのためには、各試合の移動距離をできるだけ縮める必要性が出てくる。
そこで提案したいのは、セ・パの枠を超え、新規4球団を含めた16チームを地区によって、現在の観客動員数やファン人口を考慮して4分割する「4地区制」だ。
北海道から北信越まで4チームを北地区に、東京、千葉、静岡の4チームを東地区に組み入れ、阪神、中日と横浜に四国を加えて西地区とし、広島、オリックス、福岡ソフトバンクと沖縄で南地区を作る。それぞれが地区でのリーグ戦を戦いながら、一定数、他地区との試合を行なう。これなら最大のドル箱、巨人戦の恩恵も維持できる。
この方式でシーズンを戦い、各地区で優勝した4球団が、プレーオフに進出。地区シリーズを制した2チームが頂上決戦で「日本シリーズ」を争うことにする。
本拠地は神奈川県だが横浜は阪神、中日、そして四国に誕生する新球団が属する「西」に属してもらい、大阪に本拠地を置くがオリックスはソフトバンク、広島、沖縄の新球団とともに「南」に籍を置く。これは各リーグに人気球団を分散したうえで、観客動員力をできるだけ4地区で平均化するように考えた結果だ。北信越のチームは地元出身である松井秀喜氏が監督をつとめれば、人気球団不在の北地区の起爆剤になるだろう。
主な対戦を、近距離範囲内にとどめることで球団の移動の経費はカットできるし、このプレーオフなら、現在のクライマックスシリーズの“不合理”も解消できる。長いシーズンを終えて順位を決めたのに、下位のチームが“日本一”になってしまう怪現象を目にすることはなくなる。
※週刊ポスト2014年6月13日号