1974年、セブン-イレブンの日本第1号店が東京・豊洲にオープンしてから、今年で40年となる。いまや日本人の生活と切っても切れないコンビニだが、本格的に普及し始めたのは1980年代のこと。
1980年代後半に『コンビニエンス物語』(いとうせいこう氏と共著)というエッセイルポを連載していたエッセイストの泉麻人さんに、当時を振り返ってもらった。
「当時、仕事場があった神宮前(東京)の裏通りにコンビニがありました。真夜中に小腹が空いて買い物に行くと、人が明かりに誘われて店内に入っていく。それが誘蛾灯に見えたので“都会の誘蛾灯”なんてエッセイも書きましたね。当時はまだ、大手チェーンじゃないコンビニもたくさんあって、酒店や米店がコンビニ風に改装していました。看板に“since 1952”なんてわざわざ入れてあったのがあの時代らしかった」
コンビニエンスストアが認知され、コンビニという略称が社会に定着していったのも、ちょうどバブルに向かうこのころだった。
「でも、タクシーに乗って“あそこのコンビニの前で”って言うと“コンビニって何ですか”ってまだ聞き返されたことも。それに、“コンビ”なんて縮め方もしていましたね」
1990年代に入ると、ほとんどの店は大手チェーンに集約されていく。その後、およそコンビニが似合わないと思われた銀座でも目にするように。
「当初は、便利だけれど街並みが画一化されるのは残念だなとも感じましたね」
しかし、同じチェーン店でも銀座なら銀座の、下町には下町の雰囲気になじむ外観の店舗も増え、今やその光景に違和感を唱える人はいなくなった。
「昔は、駅の改札の中にも必ず人がいて、対人的なコミュニケーションが公共の場には当たり前にありました。だから25年前には『コンビニの、無口で客に無関心なレジの人はちょっと違う』とも書いたけれど、今は買い物が円滑にいけばそれでいいというのが普通。時代がコンビニに合ってきたのかもしれませんね」
マニュアルが変わったのか、むしろ最近は昔の個人商店のように、レジの人の愛想はよくなってきた気がする、とも付け加えた。
「40年が経ち、お客もコンビニと一緒に大人になっている。今後は、シニアのためにバリアフリーを前面に押し出した扉の大きな店舗が出てきたりするでしょう。そういう部分から、また変わっていくのだと思います」
※女性セブン2014年6月12日号