中国の中央銀行である中国人民銀行総裁や天津市長を歴任した戴相龍氏の長男の戴車風氏が香港の銀行に預けていた1000億ドル(約10兆円)もの資金を南アフリカに移転していたと報じられた。これは、中国全土で展開されている腐敗取締の動きが香港に及んでおり、追及を回避する狙いがあると中国情報専門のニュースウェブサイト「博訊(ボシュン)」が「独自情報」として配信した。
戴相龍氏といえば、中国では著名な経済人であり、中国農業銀行副総裁や中国交通銀行総裁、人民銀行総裁を務めるなど当時の朱鎔基首相の下、金融改革に大なたを振るった。さらに、2002年から5年間、北京に隣接する直轄市である天津市長に就任し、天津市を「中国のマンハッタン」といわれるほどの金融センター都市として蘇らせた。
そのような戴氏に寄り添うようにして、経済活動をしてきたのが、戴氏の一族に連なる戴志康氏。同氏は不動産業を中心とする証大集団の総帥だ。
戴相龍氏は1990年代の上海の金融センターである浦東開発区の不動産関連事業に戴志康氏を重用。長男の車風氏と組ませて、共同事業を展開し、莫大な利益を掌中にした。
戴相龍氏が天津市長に転じると、車風氏も事業の拠点を香港に移し、1000億ドルもの資産を香港上海銀行やスイス銀行香港支店、シティバンク香港支店に分散して運用していた。
ところが、2012年秋の習近平指導部の発足で、腐敗撲滅運動が大々的に展開。今年に入って、幹部子弟の不透明な資産を調べるために、党中央規律検査委の係官が香港に入り、捜査を開始したことから、危機感を感じた車風氏が志康氏に相談し、資産を南アに移すことにしたという。
不法な資金移転を調査する国際的な民間の専門機関「グローバル・フィナンシャル・インテグリティ(本部:ワシントン)」によると、2001年から2010年までの10年間で、中国から流出した資金は2兆7400万ドル(約274兆円)にも達し、全世界の不法資金の半分を占める。また、最近では中国からの流出資金は1か月で1000億ドルに及ぶという。