認知症高齢者とその予備軍は合わせて国内で862万人にものぼるなど認知症については、アメリカをはじめ先進国で共通の社会問題となっており、世界各国で研究が進められている。その中で、歯周病にかかっている人は認知症になりやすいなどの研究データも出てきた。
他の疾患と認知症の関係のなかで、理由は不明だがもっとも奇妙な相関関係にあるのが、「がん」である。しかも、「がんになった人は認知症にならない」という、負の相関関係にあったのだ。
『ニューズウィーク』日本版5月13日号によると、イタリア学術会議の研究チームがイタリア北部の住民100万人以上を対象に調査したところ、2004~2009年までの間に2万1000人以上ががん、3000人弱がアルツハイマー病と診断されたという。ところが、奇妙なことに両方を発症したのはわずか161人だけ。この結果から、アルツハイマー病患者はがんになる確率が43%減少し、がん患者はアルツハイマー病になる確率が35%減少することになった。
これに先行した米ワシントン大学の調査では、腫瘍を抑制する遺伝子「TP53」が、アルツハイマー病患者では活発だが、がん患者の50%では不活性化したという。アルツハイマー病とがんは二律背反の関係にあるということだ。
ちなみにこの『ニューズウィーク』では、カナダ・マギル大学のシェリフ・カラマ准教授らの研究チームによる、もう一つの衝撃データも紹介されている。
588人の被験者を長期調査したところ、70代でIQ(知能指数)が高くて大脳皮質が厚い人の3分の2以上が、11歳の時点で高いIQを示していたという。
〈IQが高い人ほど「認知症の発症が遅れることを示すデータがある」〉(同誌)
何とも身もふたもない事実ではないか。
※週刊ポスト2014年6月13日号