NHK『あさイチ』(5月26日放送)で特集された「家庭内別居」夫婦の実態が反響を呼んでいる。家庭内別居とは、ひとつ屋根の下で暮らしていながら、夫婦がほとんど関わりを持たずに生活する状態をいう。こうまで悲惨な状況なら離婚した方がいいのでは?──そういいたくもなるが、家庭内別居を貫く夫婦にはそれぞれ事情がある。
「ずっと専業主婦だったので、私には経済力がないんです」(50代主婦)
「子供が就職して独立するまでは、何が何でも離婚できない」(40代会社員女性)
「地方在住で教員をやっているので、離婚は信用問題に関わる。退職するまではこの状態を保ちます」(50代公務員男性)
という声のなか、こんな計算高い意見もある。
「うちの場合、夫が不貞を働いたわけでも暴力を振るったわけでもないので離婚したとしても子供の養育費しかもらえません。財産もほとんどないので財産分与も期待できない。でも、家庭内別居なら毎月の生活費が見込める。このまま夫からは生活費をむしりとって、家事も夜の生活も面倒を見ない。これって最高じゃないですか?」(40代公務員女性)
金の切れ目が縁の切れ目ならぬ、縁の切れ目が金の切れ目ということか。実際に、家庭内別居に陥った場合、夫は妻に生活費を渡さなければならないのか。夫婦問題に詳しい弁護士の長瀬佑志氏がいう。
「まず、別居生活をしている夫婦の場合、『婚姻費用』として生活費を請求できます。夫の年収が500万円、妻の年収が150万円で、中学生の子供が2人いたら、夫が妻に支払うのは月額8万~10万円が相場でしょう。家庭内別居でも同じで、妻は夫に権利を主張できます。話し合いが決裂したら、調停に持ち込むことも可能です」
離婚となると財産分与など金銭にまつわる面倒な手続きは避けて通れないが、それに比べると生活費を渡し続ける程度ならなんということはない。長瀬氏のもとには、そう考える夫からの相談もあるという。
※週刊ポスト2014年6月13日号