自宅前で遊んでいた4歳の男の子が隣家の犬に襲われたが、男の子の家の飼い猫が犬に体当たりして撃退した。YouTubeに投稿された動画をきっかけに、アメリカだけでなく日本のテレビ番組でも大きく取り上げられたこの出来事は、猫は犬よりも弱いのではないかという先入観を覆すものとして話題になった。Can! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する西川文二氏が、猫は犬より強いか弱いかについて解説する。
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見ましたですか? 犬に襲われる人間の子供を猫が助ける、って映像。なかなか圧巻でしたな。
見た人から尋ねられる。猫ってのは犬よりも強いのか? って。猫と犬と共に長年暮らしてる私めの分析では、1対1でガチで戦わなくちゃいけない状況になったら、コレ猫がたぶん有利。なんでかっちゅうと、武器の数が違う。
犬の武器は口。その鋭き犬歯で相手にみつく。ところが、この武器、猫も持ち合わせてるんですな。そればかりか、猫には鋭き爪にものいわす「猫パ~ンチ」っちゅう必殺ワザがある。
犬の噛みつきを牽制するジャブの役目をするばかりか、ヒットすれば、それはいわばカミソリパンチ。爪が目をとらえれば、犬はひとたまりもないのですな。
もっとも、犬と猫が1対1で戦うってな場面は少ない。そもそも動物ってのは、「戦う」前にケガを負うリスクの少ない「逃げる」ってな選択肢を選ぶ。
猫は3次元的に動けますしね、2次元的にしか動けない犬が相手なら逃げるが勝ち、ほなさいなら、って行動にでる。
リスクを犯してでも「戦う」、って場面もある。それは逃げる選択肢をたたれた窮鼠猫を噛む的な状況か、あるいは野良猫なんかであるのがただいま子育て中です、ってな状況。巣の近くで目があったりすると、何もしてないのに向こうから飛びかかってきたりする。
かの映像は子育て中の野良が見せるような攻撃に見えなくもない。人間の子供が急に襲われるっちゅう突然の状況において、我が子を守る遺伝的行動プログラムのスイッチがパチン、と入ったか? ま、真相はわからんですけどね。
なんでも最強の空手家、大山倍達をもってして「猫とは日本刀を持つことで互角」といわしめたとか。う~ん、猫って、ニャンとも恐るべし、ですな。
※週刊ポスト2014年6月13日号