辛口ファッションチェックで人気のドン小西さんが、『ドン小西のファッション哲学講義ノート』(にんげん出版)を上梓した。さまざまな人生経験を経た小西さんだからこそ伝えられる『ファッション哲学』を独自の切り口で綴っている。
実家の呉服屋が経営する洋装店のアトリエで幼少期を過ごした小西さん。それゆえ、ファッションは常に身近な存在であった。
「大学は工学部に進んだものの、当時、足しげく通った喫茶店やディスコで出会ったファッション業界や音楽業界の人に刺激を受け、将来はデザイナーかミュージシャンになりたいと思っていました。祖父に頼み込んで、10万円を手にし、ロンドンに数か月滞在しました。そこで毎日のようにグラムロックに触れていたんですが、ぼくがやりたいのは音楽よりファッションだと思い、帰国後、本格的に服作りを学ぶようになりました」(小西さん以下「」内同)
以後、ファッション業界の異端児として、奇抜とも捉えられるような鮮やかな色合いのニットやシャツをデザインし続けた。始めたばかりの頃の売れ行きはいまひとつだったが、1985年に上映された映画『哀しい気分でジョーク』の中でビートたけし(67才)がドン小西デザインのニットを着たことで、一気にブレーク。社会現象にまでなった。
しかしその後、日本ではシンプルなものが流行し、いつしか人気は頭打ちに。借金も膨れ上がり、どん底にまで陥ったこともあった。
「財産や親しいと思っていた友人などすべてを失い、地獄ともいえる状況で死ぬことすら考えたこともありました。でもその時、腹の底から“ぼくにしかできないことがある”と確信が湧き上がってきたんです」
唯一無二の存在であること。ファッションとはそういうものだと著者は断言する。
「人がどうであろうと、自分が好きなものを着るのがいちばんいいんです。ぼくも“なんだ、ドン小西、あんなかっこうしやがって”ってネットなんかで叩かれることもありますが、全然気にしない。
日本人は“周りから変に思われちゃいけない”という思いが強く、みんな同じような服を着るでしょう。でもそれじゃつまらない。同じような服を着ている人って、話している内容も似たり寄ったり。個性がない」
※女性セブン2014年6月19日号