スマホをささっと操作するだけで、離婚することができる──そんな時代もそう遠くないかもしれない。
政府は共通番号(マイナンバー)を使った個人専用サイト「マイ・ポータル」の活用法として、2017年1月から転居や結婚、死亡などの申請がネット上でできる仕組みを検討し始めたと発表した。マイナンバー制度とは社会保障と税の共通番号を導入し行政手続きの簡素化や税の徴収漏れ対策、生活保護の不正受給防止などに役立てる目的がある。
婚姻届や転居届の他にも、「広く行政手続きができるようにしようという目的がありますので、もちろん離婚届も選択肢にあります」(IT総合戦略本部)と、離婚もネットで申請できるようになる可能性がある。
マイ・ポータルはスマホやパソコンのほか、ネットに接続していればテレビからも手続きが可能となる。妻がスマホをいじりながら、「ハイ、離婚届出しておいたから」と夫に迫る──ということが実際に起こるかもしれないのだ。
“スマホ離婚”について、夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美氏はこう危惧している。
「まず心配なのは、セキュリティの問題です。夫婦の同意や、送信者が本人であるかどうかをどう証明するのか。現制度でも、離婚の同意ができていないのに離婚したい側が勝手に提出するということが発生して問題になりました。
こうした問題をクリアできたとして、懸念されるのは離婚率の増加です。これまでは、離婚届にサインして判を押し、役所に届け出るという行為が、離婚の最後の防波堤の役目を果たしていました。スマホで簡単に手続きができるようになるとその防波堤がなくなり、意思確認も十分せず、刹那的に離婚してしまう夫婦が増えると懸念されます」
家庭内別居で妻とコミュニケーションをとらないでいると、気づけば“スマホ離婚”という事態になりかねない。
※週刊ポスト2014年6月13日号