保守派の論客の中には、政府が検討し始めた「移民20万人構想」に反対する意見もある。保守派の重鎮として知られる石原慎太郎氏はどう考えるか。
──移民を受け入れるならば彼らへの教育は重要だと思うが、島国の日本は異文化で育った人々を登用できるのだろうか。
石原:日本は歴史的に優れた外国人を積極的に登用してきました。
朴槿恵大統領の父親である朴正煕元大統領と以前、お酒を酌み交わしたことがあります。その席で彼は「日本の朝鮮統治はそう悪かったとは思わない。欧米諸国とは違う政策を行なった」と言いました。
彼は、成績はよかったけれども家が貧しかった。すると日本人教師が「これからは朝鮮人が朝鮮人を教える時代だ」と無償で行ける師範学校を薦めてくれたそうです。そこに行くと「これからは軍人の時代だ」と士官学校を薦められた。満州国軍軍官予科に行くと今度は「優秀だから市ヶ谷に行け」と言う。最終的に彼は市ヶ谷の陸軍士官学校に編入、上位で卒業しました。
西洋列強で植民地にこんなに教育を施した例はなかった。その話をしてくれた時の朴正煕氏の嬉しそうな顔を思い出します。戦前の日本では朝鮮人でも士官学校に入れましたし、朝鮮名のまま日本兵を指揮した将軍もいました。官僚や裁判官は元より、衆議院や貴族院にも朝鮮人は議席を持っていた。そのように優秀な人材を戦前から積極的に登用していました。
──移民の能力を活用するのならば、彼らに参政権を与えてもよいのか。
石原:それには反対です。国政でなく地方参政権ならば与えてよいという意見もありますが、間違っています。例えば青森県の六ヶ所村には核燃料の再処理工場があります。ある意図をもって移民が集団移住すれば、国策的な施設の稼働や存続が住民投票によって決められてしまう可能性がある。沖縄県の与那国町の自衛隊基地問題も同様です。人口約1500人の町に中国系移民が集団移住したらどうなりますか? 地方自治体にも国家の命運を左右する政治的イシューがあるのです。
参政権がなくても、日本の素晴らしさがわかれば、「日本に住みたい」という外国人はたくさんいると思いますね。そういう人は帰化したらいい。
※SAPIO2014年6月号