CHAGE and ASKAのASKA(本名・宮崎重明)が覚醒剤所持で逮捕され、またも芸能界の薬物汚染が明るみに出た。
この疑惑は昨年、「週刊文春」が報じたことで浮上し、それから警視庁が内偵を進めたものとみられる。つまり今になって大騒ぎするネタではない。今号で特集しているように、雑誌メディアのスクープをそうと断わらずに丸パクリして恥じない大メディアの体質がよく表われた事件とも言えるが、加えて批判しておくべきは、こと芸能界に対して大メディアの追及があまりに甘すぎる点である。
はっきり言って、ワイドショーを持つテレビ局にも新聞社にも、芸能スキャンダルを取材する能力はない。彼らができるのはせいぜい番組宣伝などに乗じた「ヨイショ」報道だけで、芸能人にとって不都合な問題は、ほとんどが雑誌記事の後追いである。
しかも、今回のASKA事件のように芸能生命に関わる重大疑惑の場合、捜査当局が動いてからようやく安心して報じるのが常で、疑惑段階では見て見ぬふりをする。それでいてテレビや新聞の記者たち自身は、雑誌記事を読み漁って噂話に興じているのだから醜悪だ。
そうなる理由は簡単で、大新聞はすべて大テレビ局と一体に複合メディアグループを形成しており、大手芸能事務所に頭の上がらないテレビ局の弱腰がグループ全体に及んでいるのである。情けないのは、本来ならそれらの部門から完全独立しているべき報道部門さえも、“企業の論理”に組み込まれて芸能人の犯罪、芸能スキャンダルは腫れ物を扱うように報じていることだ。
かつて、SMAPの稲垣吾郎が公務執行妨害で逮捕された際、人気絶頂の“ドル箱”を犯罪容疑者として報じなければならなくなったテレビ局が、「稲垣容疑者」と呼ぶべきところを「SMAPの稲垣メンバー」という“名言”で報じたこともよく知られている。人気があろうが、偉かろうが、容疑者は容疑者である。
※SAPIO2014年7月号