消費増税を機に、あらゆる商品の“便乗値上げ”が広がっている。スーパーに行くと、それまで「105円」(税込み)と表示されていた商品に同じ値段の値札がついている。「価格据え置きなんだ」と思って買ったら、精算のときに「113円です」といわれる。よく見ると、レジの脇に、〈当店の価格は全て税抜き表示となっています。レジ精算時に別途消費税相当額を申し受けます〉という張り紙があった。計算すると、約8%もの値上げである。
「10分1000円」の看板で知られる理容チェーン「QBハウス」の値上げもこのパターンだ。内税から外税への変更で税込み料金は1000円から1080円になった。
夏には、さらなる値上げラッシュがやってくる。7月には日本ハム、伊藤ハムがそれぞれ200品目以上を平均10%値上げし、明治は「ミルクチョコレート」、森永も「チョコボール」といった看板商品の内容量を減らして実質値上げに踏み切る。ロッテも8月から価格はそのままで「コアラのマーチ」の大袋の内容量を20%前後減らすというから大幅値上げだ。
航空運賃も上がる。日本航空は7月から国内線運賃を平均1.5%、全日空は平均2%、エア・ドゥは7路線を平均7%値上げする。
各社は値上げの理由を「カカオ豆など原材料価格が高騰している」(ロッテ広報室)、「豚肉の仕入れ価格上昇のため」(日本ハム広報室)と説明するが、国民にすれば、4月の消費増税で税込み価格が上がったばかりなのに、もう上げるのかと悲鳴を上げたくなる。経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「企業にすれば、4月に消費増税分を価格転嫁する際に、消費者がどのくらい反発するか心配していたわけです。ところが、消費者の反発は思ったより小さかった。そこで『これなら、もう少し上げても大丈夫だろう』と、今度は原材料コストのアップ分などを価格に上乗せする値上げを準備している企業もあります」
これまでコストダウンと企業努力で値上げを避けていたのが、安倍政権の「インフレ歓迎政策」でこれ幸いと堰(せき)を切ったように値上げを始めたのだ。
「しかし」と荻原氏が続ける。「国民の収入は増えていませんから、これ以上、物価が上がると商品が売れなくなる。商品を値上げして企業の収益が減るという結果になりかねません」
実際、牛丼大手3社の売り上げを見ると、値下げしたすき家を含めて3社とも4月の売り上げは前年同月比で大幅にダウンしている。消費者の購買力が下がっているのに、商品を値上げしても売り上げが増えるわけがないのだ。
※週刊ポスト2014年6月20日号