自身がパーソナリティーを務めるTBSラジオ『ミュージックプレゼント』で、お年寄りたちに愛情ある毒舌をぶつけまくる毒蝮三太夫(78才)。毎週月曜から金曜まで生中継されるこの番組は、45年にもおよぶ長寿番組で、その現場には毒蝮目当てのお年寄りが毎日わんさか集まってくる。
長年老人を元気にし続ける毒舌パワーが注目され、近年は「介護」や「老人福祉」の専門家としても講演などに引っ張りだこの毒蝮。15年前からは聖徳大学で客員教授として福祉コミュニケーション論の教鞭を執る。
「オレは介護の専門家ってわけじゃない。だけど、45年間毎日年寄りと会って話してきたから、年寄りとのつきあい方はわかってるんだよ」(毒蝮・以下同)
喜寿を迎えたとは思えぬ声の張り、背筋にものさしが入ったようなピンとした姿勢で毒蝮節が飛び出してきた。これこそが毒蝮の最大の魅力なのだろう。
「年寄りには、笑顔で話しかける、肩に手をかける、気にかけるという、“3つのかける”が大事。まずは、笑顔で味方だと思わせること。それができれば、だいたいは大丈夫。そして、肩に手をかけて、安心感を与えることも必要だよな。この2つで、みんな安心するよ」
最近は、携帯だのメールだのが普及して、お互いの顔を見て話す機会が少ないから、他人の顔色を読むのが下手になっていると毒蝮は指摘する。
「アナログが大事なんだよ。オレのやっていることは、“かまい合い”。声をかけて顔色を見て、話を聞いて、また声をかける。昔の隣組の精神なんだよ。最近は周りがオレのやっていることは“言葉で介護”だなんて言ってくれるけど、オレは介護だなんておおげさなものだとは思ってないよ」
大学での教え子のほとんどは、核家族で育ち、老人が身近にいない環境だ。当然、そのコミュニケーションも学ばねばならないものとなる。
「学生は年寄りとの接し方がわからない。だから、どう接したらいいのかというノウハウを教えているわけ。“3つのかける”に加えて、年寄りを尊敬すること。どんな年寄りにも生きてきた分だけの歴史がある。それを尊重して、年寄りに“自分が生きていることは役に立っているんだ”と思わせること。有用感って言ってるんだけど、これがないと、年寄りはイライラするんだよ」
お年寄りは世の中から弱者として扱われるため、マイナス思考になっている人が多いと毒蝮は感じている。
「だから、若い人が“あなたには歴史がある。あなたは先生ですよ”って思わせてあげれば、相手もいろいろなことを話してくれる。そうすれば、戦争の話や年寄りの知恵なんかも知ることができる。温故知新って言葉があるけど、年寄りはその塊じゃないか」
会話のコツは、お年寄りの話を遮らないこと。
「遮っちゃうと、嫌がられているんじゃないかと思って、話さなくなっちゃうから。正直、年寄りの話は繰り返しが多いし、要領を得ないこともあるよ。だけど、フリでもいいから、興味を持ってあげることが大切。そうすることで、“生きててよかった”って思ってもらえる。たいしたことじゃないだろ?」
※女性セブン2014年6月19日号