8年前夏の甲子園で優勝した早稲田実業のエース斎藤佑樹は「ハンカチ王子」として全国区の人気者となり、早大進学後も勝負強さから「持っている男」と言われたが、現在は日本ハムで二軍暮らしが続く。一方で準優勝に終わった駒大苫小牧の田中将大はニューヨーク・ヤンキースで活躍中だ。今やメジャーで活躍する田中にとって、斎藤はすでに眼中にないかもしれない。しかし彼はかつて、確かに斎藤へのライバル心を見せていたことがあった。
斎藤がドラフトで指名される2010年、田中はこんな言葉を残している。
「いつまで“ハンカチ世代”っていわれるんでしょう。プロでも同じ年の選手に負けてはいけないと思っています。トップでいたいです」
そこには、「自分はプロで実績を残し、斎藤よりも優れている」という自負が感じられる。
しかし現在では、両者がライバル関係といわれることを、あまり好まない。むしろお互いに毛嫌いしている感すらある。
斎藤は先日放送されたNHKのドキュメンタリー番組で田中について聞かれ、こう不満を露わにした。
「(田中は)同世代の1人ですし、すごいことには変わりはないです。ただ正直、僕がプロでこれからやっていくことに対して、あまり関係がない」
正論であり、斎藤の本心であろう。しかし世間はそうは見ない。例えるならば桑田・清原の「KKコンビ」のように、同世代の両者はたとえ引退後であっても、ライバルとして見られ続けるのは間違いない。
8年前と今では、180度変わってしまった両者の運命。しかし、今年26歳になる彼らの野球人生はこれからも先は長い。野球評論家の村田兆治氏は、斎藤に向けてこう助言する。
「打たせて取るピッチングを目指すにしても、下半身で投げなければ話にならない。低めに制球された球を打たせるには、投げた後に低い姿勢となるフォームが作れるかどうかが問題。ここを修正すれば、まだ期待は持てる」
斎藤は再び立場が逆転できるか。それができれば、確かに“持っている”男になれるのだが──。
※週刊ポスト2014年6月20日号