日本代表最多出場記録(144試合)を持つ、ザックジャパン最大のキーマンがMF・遠藤保仁だ。W杯開幕前、釜本邦茂氏と本誌で対談した。そこで遠藤は、ギリシャ戦に対する自信を覗かせていた。
遠藤はそのプレースタイル同様、対談中も冷静に釜本氏の質問に答えた。終始言葉を選びながら回答していたが、珍しく踏み込んだ発言をしたのが、ギリシャ戦の展望を聞かれた時だった。
「ギリシャは日本と同じように組織で守り、とにかく失点を少なくした上で、数少ないチャンスをモノにして勝つチームという印象があります。W杯でもこのようなロースコアの展開が予想できますね」
ただ──。そういって、遠藤は続けた。
「グループCの中では最もいいイメージを持っている、やりやすい相手だとも思っています」
実は日本代表が過去にギリシャ代表と対戦したのは、2005年のコンフェデレーションズカップでの1回しかない。グループCの他国に比べ対戦回数が少なく(コートジボワール・3回=2勝1敗0分、コロンビア・2回=0勝1敗1分)、最も想定が難しい相手にも感じられる。なのになぜ、遠藤には「自信」があるのか。それにはこんな理由があった。
まずは「いいイメージ」の根拠となる、前回対戦時の記憶だ。2005年のドイツ・フランクフルトでの試合で、日本は終始積極的にギリシャを攻め立てた。前半からFWの玉田圭司、柳沢敦が立て続けにシュートを放って、ギリシャゴールを脅かす。そして後半30分、途中出場した大黒将志がゴールを決め、1-0で勝利した。
この試合を有利に運べた理由は、なんといっても中盤で日本のパスが繋がったこと。細かいパスワークから点を取るという、今の日本代表に通じるスタイルで勝利したのである。
「しかも当時のギリシャは、欧州王者という立場でした。レーハーゲル監督の指導の下で、徹底したマンツーマンを敷き、守備力でいえば現在の代表以上との指摘もある。そんな王者相手に、アウェイで競り勝てたわけです」(サッカー誌記者)
現在の日本代表は、当時よりもプレーの精度が格段に上がっている。欧州の一流クラブチームで活躍する選手たちが名を連ね、パスはもちろん、決定力も大きく進歩している。一方のギリシャも進化してはいるが、「テクニック面では日本のほうが圧倒的に上」(同前)というのが一般的な見方だ。
さらに「成功体験」が選手に与える影響はかなり大きいようだ。遠藤はこうも語っていた。
「コートジボワールは、前回大会の開幕直前に行なった親善試合で0-2で負けているから、その時の印象がかなり強く残っている。でもギリシャには一度も負けたことがない。単純だけど、これってすごくいいイメージに繋がるんです」
※週刊ポスト2014年6月27日号