野党はいま、連鎖的に核分裂が進む「臨界」状態になっている。最初の分裂は「みんなの党」。昨年、渡辺喜美・前代表が特定秘密保護法に賛成して安倍政権に擦り寄ったことをきっかけに分裂し、飛び出したのが「結いの党」。その結いの党が「日本維新の会」に合流しようと突撃、衝突して維新に分裂を引き起こした。
続いて、維新の分党で生まれた「橋下新党」が民主党にぶつかり、「民主党も分裂するべきだ」(橋下徹氏)と裂け目をつくろうとしている。
各党は分裂のたびに小さくなり、それぞれが安倍政権に接近して、なんとか自公を引き裂いて公明党の代わりに政権入りを図ろうと競い合っている。
目下、自民党のパートナーの最有力候補といえば、みんなの党だ。
「安倍支持」を鮮明にしていた渡辺氏が失脚した後も、同党は集団的自衛権の「限定的容認」ではなく、「集団的自衛権の行使そのものを容認すべき」という首相が大喜びしそうな方針を打ち出している。
浅尾慶一郎・新代表はテレビ討論番組で「自民党が公明党を切ったら、世の中はもっと大きな大政界再編になる。私は躊躇すべきではないと思う」と連立参加への期待に胸を膨らませている。
そのみんなの党との連携を模索しているのが維新から分党する石原新党。石原慎太郎氏は自民党との連立や合流を否定しているものの、「自民党と公明党が袂を分かつきっかけになったらいい」と、与党分裂を起こさせるための突撃隊を志願している。
石原新党への参加を決めている若手議員は、「石原さんや平沼赳夫さんは自民党時代、安倍総理の師匠格で、自主憲法制定という政策でも一致する。次の選挙では自民党と必ず協力できるはず」と自民党頼みの生き残りに期待を隠さない。
それに対して、結いの党との合流を決めた橋下新党の橋下氏も、「われわれの参院議席数で、安倍政権は過半数をとりうる。僕らの議席で集団的自衛権が前に進みうるのであれば、政治家冥利につきる」(6月7日、テレビ番組)と安倍政権になんとしても抱きつこうという姿勢なのだ。
一方、野党第一党の民主党は、早くも海江田万里・代表辞任を前提に代表選準備が始まっている。その中で先行するのは岡田克也・元副総理と細野豪志・前幹事長だ。どちらかが代表に就けば、左派やリベラル派を切り捨てて党内を集団的自衛権行使賛成に一本化し、安倍政権と共同歩調を取れると見る向きもある。
民主党、橋下新党、石原新党、みんなの党……有力野党がこぞって“安倍の愛人”になりたいと行列をつくっている状況は、おぞましい限りである。
※週刊ポスト2014年6月27日号