STAP細胞騒動では理研の小保方晴子・ユニットリーダーの博士論文に米研究機関HPからの「コピペ」があったことが話題となったが、小保方氏を追及した新聞記者たちは、自分たちが公的機関からもらった報道資料をひたすら書き写して“自分の仕事”にしていることを恥じないのだろうか。
<STAP細胞が明らかにした新しい原理の補足解説>と題されたA4判1枚のペーパーがある。1月28日、小保方氏らがSTAP細胞を発見したと最初に発表した記者会見で配られた資料だ。
理研HPなどで公表された発表資料とは別に、笹井芳樹・CDB副センター長が作成して会見場にいた報道陣だけに配られたものである。
同ペーパーはイラスト入りでSTAP細胞とiPS細胞を比較し、そのメカニズムの違い、マウスのリンパ球の体細胞が多能性を持った細胞になるまでにかかる「期間」「作製効率」が記されている。
STAP細胞の場合は2~3日間で作製効率30%以上(資料では2d~3d、>30%と表記)、iPS細胞は2~3週間で0.1%程度(同2w~3w、~0.1%)とわかりやすく解説されている。
iPS細胞よりも優れていることが強調されており、1月30日の朝刊で各紙は資料の通りに第一報を打った。
<生き残ったリンパ球を特殊なたんぱく質を加えて培養すると、2~3日で多能性を持ったSTAP細胞に変化した。iPS細胞の作製には2~3週間かかる。初期化される細胞の割合も30%以上で、iPS細胞よりも高かった>(読売新聞)
<万能細胞の作製効率はiPS細胞より高く、作製期間もiPSの2~3週間より短かった>(毎日新聞)
朝日新聞は<iPS細胞(人工多能性幹細胞)よりも簡単に効率よく作ることができた>とした上で、両者を比較する図表を掲載し、STAP細胞を<効率よく作れる>、iPS細胞は<作製効率も良くない>と対比させた。
報道陣だけに配られた資料をもとに横並び報道がなされたわけだが、実はペーパーの内容には大きな間違いがあった。
2月10日、iPS細胞の生みの親である山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長が「報道に誤りがある」と反論会見を開く事態となった。
山中氏は会見で、iPS細胞の「作製効率0.1%」という数字は2006年当時のもので、2009年には20%に上昇したことなどを指摘した。
それを受け、3月18日になって理研は会見で配ったペーパーの撤回を発表したが、報道陣にしか配られていない資料を「撤回する」と言われても国民には何のことかわからない。
※SAPIO2014年7月号