ほんの少し前までは、松井秀喜、小久保裕紀、清原和博といった日本人のホームランバッターがプロ野球の各チームにいたが、昨今のホームラン王レースは常に外国人選手がリードするような状況だ。そもそも現在の球界では、「大砲を育てよう」という思いが希薄になっているという指摘もある。野球評論家の広澤克実氏は古巣・阪神の例を挙げ、チーム戦力構想の疑問点を指摘した。
「今の阪神の和田豊監督は、緒方凌介(外野手・24歳)、荒木郁也(内野手・26歳)、大和(外野手・27歳)、上本博紀(内野手・28歳)といった俊足・巧打タイプが好きでよく起用します。しかし、ファームには去年ウエスタン・リーグで本塁打と打点の二冠を獲った森田一成(内野手・25歳)という立派な和製大砲候補がいるんです。生え抜きの大砲が出れば確実に人気になるはずなのに、なぜか使いたがらない」
これは何も阪神だけの事情ではない。例えば中日の高橋周平(内野手)は、将来の主砲候補として2011年にドラフト1位で入団。1年目にはウエスタンの本塁打王になり、2年目にはホームランの数を伸ばして、一軍で球団最年少満塁本塁打を放つなど順調だった。しかし今年は二軍でも2本(6月12日時点)と、これまでのようにホームランが打てなくなってしまった。
「昨年まで宇野(勝)コーチがいた間は好きなように打たせてもらえていたが、コーチが代わった途端、アベレージヒッターに転向させられてしまったことが原因です。高橋は最近の若い打者では珍しく、三振した後もそれを引きずらずに思い切ったスイングができる長所があった。しかし最近のコーチは、そうした長所を伸ばすというよりも、短所を克服させるほうに重点を置く傾向がある」(中日担当記者)
※週刊ポスト2014年6月27日号