安倍晋三首相が「集団的自衛権」と吠えるたびに、野党各党はポップコーンのように弾け、分裂していく。みんなの党、日本維新の会に続いて、野党第一党の民主党でも「海江田降ろし」の分裂劇が始まった。
野党が総崩れ、公明党も理念をかなぐり捨てて政権にしがみつく状況では、安倍首相が外交でどんな失敗をしようが、アベノミクスでどれだけ不況が深刻化しようが、自民党が選挙で政権を失う心配はなくなる。安倍側近がいう。
「総理は来年の総裁選で再選すれば2018年まで任期があるが、その先も、2020年の東京五輪の先まで総理をやるという自信をつけている」
安倍首相にそんな勘違いをさせてしまったのは、与野党の国会議員たちが政権をチェックする本来の役目を忘れ、自分の議席を守りたいという「我が身の安全保障」に走っているからだ。政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。
「維新の会やみんなの党、結いの党の議員は前回の総選挙でブームに乗って当選したので強い地盤を持っていない者が多い。国政で実績もあげていないし、次は風が吹かないから、大半は落選の危機を強く感じているはずです。
野党議員なら国会質問で政府を鋭く追及して評価を高めるのが本来の姿ですが、その力もない。だから、たとえ可能性が低くても自民党との連立で拾ってもらう道を考えてしまう。
とくに大臣を経験したような民主党の幹部はもう一度陽の当たるポストに返り咲きたい。だから安倍首相に擦り寄っている」
もちろん、連立相手が選び放題の自民党は、そんな野党の足元を見て利用しているだけだ。自民党は参院では単独過半数に8議席足りないが、衆院は293人もの議員がいて300小選挙区のほとんどが埋まっている。どうみても選挙区調整の余地はない。
石破茂・自民党幹事長が維新分裂への対応について周辺に漏らした言葉が自民党の本音を物語っている。
「石原(慎太郎)さんや平沼(赳夫)さん、園田(博之)さんとか実績のある人たちならまだしも、石原、橋下の2枚看板に乗ってわらわらと当選した人たちに『自民党に入りたい』といわれてもね。それはいかがなものか」
※週刊ポスト2014年6月27日号