厚生労働省の研究班がまとめた、全国20大都市の「健康寿命」データ(2010年時点)で日本一に輝いたのが、静岡県浜松市。現在メディアはやれ緑茶だ、ウナギだ、みかんだと「理由探し」に躍起となっている。
各種報道で長寿の秘訣としてよく登場するのが「緑茶」だ。消費額は静岡市が全国1位(年間1万1302円)で浜松が2位(同8216円)。静岡県栄養士会で理事を務める管理栄養士の木下初代氏が緑茶の健康効果を解説する。
「緑茶の主な成分はカテキン、カフェイン、テアニン、サポニンなどです。カテキンは血中コレステロールの低下、体脂肪低下、がん予防などの効果があるとされ、テアニンにはリラックス作用があると示す実験結果があります。ビタミン類も豊富に含まれており、静岡県の『茶業研究センター』では緑茶の健康効果などについて行政からの支援を受けて研究が行なわれています」
そうした研究結果があるのは事実であり、さらなる解明に向けて研究が続けられることに意味はある。ただし、「お茶をたくさん飲めば長生きできる」という短絡的な結論にはならない。静岡県立大学・茶学総合研究センター長の中村順行氏(同大食品栄養科学部特任教授)はこう指摘する。
「緑茶をたくさん飲む地域で健康寿命が長いとしても、緑茶以外の要因が重なっていることも考えなければいけません。
緑茶のがんを抑える効果はマウス実験でわかるレベルのものです。人間は煙草を吸ったりお酒を飲んだりしますし、ストレスもたくさん抱えている。つまり緑茶の健康効果を消して余りある負の要素がたくさんあるわけです。医師の管理の下で、実験マウス並みの“純粋培養”の生活を送ることができれば効果を実感できるかもしれませんが、現実にはそんなことは不可能です」
加えて、どんな食材・栄養素にも「摂り過ぎるリスク」が存在する。国立健康・栄養研究所がまとめた〈「健康食品」の素材情報データベース〉では、様々な栄養素の利点とリスク情報が公開されている。例えば、カテキンについては次のような記述がある。
〈通常量の緑茶としての飲用では、おそらく安全と思われる。ただし、カテキンを摂取する目的で多量の茶類を飲用する場合には、混在するカフェインの摂取により種々の生理作用(頭痛、神経興奮作用、利尿作用、血圧上昇など)が現れる可能性があり、特にカフェインに過敏な人は注意が必要である〉
どのくらいの量が適切かは個人の体質や生活習慣によって異なるから注意が必要だ。
※週刊ポスト2014年6月27日号