「どこから浮気?」というネタは男女問わず盛り上がるものだが、そういった話題はつまるところ“カラダの関係があるか否か”に収斂される。疑いを持たれても、実際は本当に“清い交際”であるようなケースも世の中には多数あるものだが、既婚男性は女性と清い交際であっても不法行為とみなされるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏はこう回答している。
【相談】
定年を迎え趣味仲間の40代の女性とお付き合いをしていましたが、この間、食事の帰りに彼女の肩を抱いたところを妻が目撃したらしく浮気だと大騒ぎ。彼女に対し慰謝料を請求すると息巻いてもいます。仮に裁判になった場合、肉体関係がなくても、彼女は慰謝料を払うことになるのでしょうか。
【回答】
あり得ることです。本誌4月25日号に「セックスなしでも不倫? 大阪地裁がプラトニックラブに重大判決」と題する記事が掲載されています。肉体関係がなくても不倫だとして、男性の妻が交際相手の女性に対して求めた賠償金請求に慰謝料44万円を認めた事例です。
記事によると会社の同僚で、勤務地の関係から遠距離交際をし、男性が男女の関係を求めたが女性が断わり、花火大会や体育館でのバドミントンなどの“清い交際”を続けたところ、冷たくなった夫を怪しんだ妻が証拠を集めて訴えました。裁判所は、肉体関係を認めるに足りる証拠はないが、「相当な男女の関係を超えたものと言わざるを得ない」として不法行為を認めました。
夫婦の一方の不貞行為は、離婚事由になります。この不貞行為は、通常は肉体関係を持つことをいい、一回やごく短期間の肉体関係は、不貞に当たらないと解される場合が多いのですが、これは不貞が夫婦の貞操を守る義務に違反した離婚事由になるかどうかという観点から問題にされるからです。したがって、プラトニックラブであれば、それだけでは離婚の原因になる不貞行為にはならないでしょう。
しかし、この事例もご質問の場合もそうですが、妻が求めているのは離婚ではなく、相手の女性に対する慰謝料請求です。この慰謝料請求の根拠は不法行為で、不法行為は相手方の権利や法的に保護される利益を侵害することにより成立します。肉体関係を持てば、もちろん貞操を守らせる権利の侵害になります。
しかし肉体関係がなくても、程度を超せば婚姻共同生活の平和の維持という法的保護に値する利益の侵害として、不法行為になる可能性はあります。なにより奥さんへのケアを怠らず、婚姻生活の平和の維持を図ることです。
【弁護士プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2014年6月27日号