そのクリニックは、かつて東京・六本木のど真ん中に建つ高層ビルの1フロアをすべて借り切って開業していた。エレベーターを4階で降りると、入り口にはコンシェルジュが待ち構え、白を基調にした院内には、高級ソファが並んでおり、病院というよりは、まるでラグジュアリーホテルのロビーのようだった。
「一般患者用の入り口とは別に、芸能人などVIP専用の入り口があり、待合室も別々に仕切られていました。小室哲哉さん(55才)、X JAPANのTOSHIさん(48才)など、超有名人がたくさん来ていました。ある時は、巨人の人気選手が、飲み物を片手にソファに座って漫画を読んでくつろいでいたのを目撃したことがあります」(当時の患者)
VIPたちを含め、訪れる患者の大半のお目当てとなっていたのが、打てばたちまち疲労回復するという、通称“ニンニク注射”だった。
直径3cm、長さ15cmほどの大きな注射器に薄いピンク色の液体が入っており、これを、先生が慣れた手つきで、患者の腕に打っていく。1本打つのに3分ほど。診察室を出てくる頃には、みな顔の血色が異様によくなっていたものだ。
この“注射の名医”こそが、数多くの大物有名人を顧客に持ち、自らの“帝国”を築き上げた平石貴久医師(63才)だった。
平石医師が代表を務める医療法人『貴生会』が東京地裁に自己破産を申し立てたのは、6月6日のこと。同法人の負債総額は、10億円にも上るという。
冒頭のセレブなクリニックは、資金繰りに苦しみ、4年前に閉鎖していた。その後、東京ミッドタウンのデンタルクリニックの一部を間借りする形で営業を再開したが、そこも2013年9月に閉めていた。現在は麻布の出張診療所で、こぢんまりと診察を行っている。
平石医師を一躍“時の人”にしたのは、ASKA容疑者(56才)の覚せい剤逮捕だった。ASKA容疑者の自宅では、一般人には手に入りづらいとされる覚せい剤の簡易検査キットも見つかっている。逮捕当初、覚せい剤の使用を否認し、「ぼくが使ったのはアンナカ(安息香酸ナトリウムカフェイン、眠気や倦怠感に処方される薬)」と釈明していたASKA容疑者。
その言葉を裏付けるように、平石医師は5月22日に情報番組『ノンストップ!』(フジテレビ系)に出演し、こう告白したのだ。
「実はアンナカを処方したのは私なんです。やっぱり作曲は長くなるし、アンナカは目を覚まさせるからね」
「主治医として、彼の覚せい剤の使用は、まったく見抜けませんでした」
この衝撃の告白はスポーツ紙でも大きく取り上げられ、大騒動となったが、その直後の破産劇だけに、ネット上では、
《倒産っていうか逃げたんじゃ…》
《証拠隠滅の計画倒産だな》
などと、言われてしまっている。
いずれにせよ、破産の真相は本人のみ知るところだ。
※女性セブン2014年7月3日号