サッカーW杯ブラジル大会。テレビでは連日、デモや白昼堂々の強盗など、不穏なニュースが目白押しだ。現地ブラジルはホントはどうなっているの? 日本対コートジボワール戦を観るために1才児を連れてブラジル滞在中の女性セブン女性記者が、現場からお伝えします!
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ブラジルの空港職員は噂に違わず本当に英語が話せない。知っている限りのスペイン語を駆使するも、やはり伝達力には限界がある。あーでもない、こーでもないとやり取りをして、こちらの言いたいことはなんとか伝わったようだけど、今度は向こうの言っていることがわからない。
すると、このままじゃ埒が明かないと根負けしたのか、子連れのハポネ(日本人)に同情したのか、見事なビール腹の強面オヤジ職員が、指で「ついてきな」というジェスチャーをし、友人の搭乗便到着ゲートまで連れて行ってくれた。オブリガード(ありがとう)!!
友人と合流してタクシーへ。さっそくiPhoneを取り出した私たちに、運転手が片言の英語で「絶対に街中でiPhoneを見せちゃいけない。子供はしっかり抱っこして離さないこと!」と、かなり怖い顔で言った。あとで知ったのだが、ブラジルでは12万円以上で売れるらしく、iPhoneを狙ったスリや強盗が日常茶飯事だという。
そして…翌朝からiPhoneが見つからない…。デモや暴動、地下鉄ストライキなどで、日本出発前には「えーっ、子供連れてひとりでブラジルへW杯を見に行くの!?」と、かなり心配された。いちばん心配していたのは私自身だが、考え始めると最悪のシナリオしか頭に浮かばないので、考えないようにしていただけである。
日本でも報道されていた通り、すべての準備がお粗末。オリンダでW杯の試合チケットと予約券を引き換えに、指定のショッピングモールに向かったものの、案内や周知が不充分で、引換所にたどりつくまでに約10人に場所を聞かざるを得なかった。ソフトもハードも頑張っていた南アフリカ大会に比べると、「大丈夫かな…」と不安になる。
いよいよコートジボワール戦を応援するため、スタジアムへ向かった。じつはその前日、観戦仲間のひとりが高熱を発症し、デング熱と診断された。キターッ! 虫に刺されるのが一層怖くなる。
彼は抗生物質の投与だけで入院は免れたので、タクシーをチャーターし、ホテルとスタジアムを往復することになった。が、私たちのホテルはレシフェから直線距離で100kmほど離れた町にあり、どう頑張っても片道2時間はかかる。彼は運転手と交渉し、往復2万円で話をつけたという。便乗値上げが甚だしいブラジルだが、タクシーだけは意外と安い(日本だと100km往復で最低6万円はする)。
レシフェは美しいビーチリゾートだが、ブラジル屈指の犯罪都市でもある。試合の前後には、日本人サポーターを狙ったスリや強盗の被害が多発したらしい。
私たちはかなりスリに警戒して目をギラギラさせて行動していたせいか被害には遭わなかったが、スタジアム近くのフードコートで食事をしたときは、かなり怖かった。そこはまるでサバンナ。フードコート内はハイエナだらけで、気を抜いたら瞬殺…そんな殺伐とした空気に包まれていた。3人に1人は、獲物を狙ってブラブラしている感じだ。目つきが悪いというよりも「死んで」いる。少年たちの空虚な目が今も忘れられない。
スタジアムも大変残念な状況だった。一見、完成しているように見えたが、スタジアム周辺の道路舗装が間に合わなかったのだろう。雨でぬかるんだ地面の上に、すのこのようなものが一面に敷かれていた。が、これに足をのせると、ズブズブと沈み込むのである。ほとんどの人が靴の中まで浸水したと思う。
【プロフィール】
尾崎唯(38)
フリー編集者/ライター。筋金入りのサッカーファンで、大学時代には女子サッカー部のストライカーとして活躍。3年前にキューバ人と結婚。「3人でブラジルへ行こう」とそそのかされて、長男レオくんを出産。ところが、「やっぱり治安の悪いところには行きたくない」と、渡航直前に夫がブラジル行きを拒否。息子と2人での観戦旅行を決意。
※女性セブン2014年7月3日号