日本全国に張り巡らされた鉄道に乗って、見知らぬ町へ行きたい――そんな想いは、むしろ男より女のほうが強いのかもしれません。列車に乗ったとたん、異空間。家事だの仕事だのとスッパリ決別して、グルメ、観光、ショッピング。そこでしか味わえないし買えない、「ワン&オンリー」の楽しみ方を乗り鉄のオバ記者とその仲間がお伝えします。
【旅行参加者】
■乗り鉄のオバ記者(57才):高2で乗った寝台特急『北陸』で“鉄”開眼。以来、新幹線+ローカル線で一日中乗ることも。
■撮り鉄のマキ(55才):30才目前の息子の“撮り”が感染したが、最近は“飲み鉄”活動にも力を入れている。
■降り鉄のユミ(44才):ひと電車を見送って、駅ナカ・駅近をくまなく散策するのが何より好き。
■食べ鉄のユウ(34才):夕飯は駅弁という日が週に2、3日はある。好物は群馬・高崎駅の『だるま弁当』。
言うまでもなく“鉄”とは鉄道好きな人を指す。“鉄ちゃん”ともいうが、ひとくちに“鉄”といっても実は、“乗り鉄”と“撮り鉄”とは大違い。だけど、“鉄男”と“鉄子”の差はもっと大きい。たとえば田んぼの中の「ここぞ」というポイントに、大勢でひな壇を作って、目当ての列車の登場をジッと待つ“撮り鉄”は、そのほとんどが鉄男だ。
鉄子の、それも“乗り”歴40年のオバから見たら、何が面白いのか、ちっともわからん。わからないけど、公共の乗り物の鉄道で楽しんでいるのは同じ、ってことは、私もオタク? あらら。
年々、血液中の鉄分は減少しても、心の鉄っ気は増えるいっぽうのオバが「何もしないことが許されている空間が列車よ」と熱く語っていたら、
「実は私はルーズな撮り鉄で」
「食べるのは列車の中がいちばんよ」
「てか、電車は降りてナンボでしょ」
と、あっという間に、恋バナを卒業した、いろんな“鉄子”が集まってきた。あぁ、鉄バナが止まらない! オバになると体が勝手に鉄を吸い寄せる、磁石化する。友達は鉄子ばかりだ。それぞれの鉄情報を駆使して、東京から熱海へ日帰り旅をしようという計画があっという間にまとまった。
東京駅に朝7時に集合。年を重ねてよかったと思うのは、早起きが苦じゃなくなったことだ。
「いえいえ、私はまだ30代」と“食べ鉄のユウ”が抵抗するが無視。実は彼女のようなフットワークのよい若者(!?)がいると、買い出しやらなんやらで、旅がスムーズにいく。
まずは、東海道新幹線改札横にある売店で朝ごはんの駅弁を購入。“食べ鉄のユウ”は駅弁にも詳しいだけあって、「これ、健康弁当シリーズなんです」と、ヘルシー駅弁を購入。日帰り旅の行きは新幹線がいい。短時間で一気に遠出気分を味わえる。駅弁を食べて、くつろいで49分で熱海へ到着。
“撮り鉄のマキ”は、「はあ~い、こっち向いてえー」と、ご自慢のデジカメでパチパチ。コテコテの“撮り”と違って「あ、ブレちゃったけど、まあ、いいわ」と、ゆるいところがいいのだ。
駅に着いたら、“降り鉄のユミ”の出番。商店街では迷わず某干物店へ。なんたって、えぼだいは、このあたりで買うのがいちばんと力説する。さんざん買い物を楽しんだ後、“降り鉄のユミ”がおすすめの食堂でランチ。「しらす丼」「金目鯛の煮付け定食」など、またもガッツリ。旅の食事は別腹、ってことで。
お次は各駅停車で湯河原へ。オバが愛してやまない旅館の日帰り湯へご案内。露天風呂は長時間入っていても、のぼせないのがいいわね。
楽しい時間は過ぎ去って、気がついたら帰る時間。名残惜しいけど、帰りの東海道線で待っていたのは、“食べ鉄のユウ”プレゼンツの宴。なんと、最年少の彼女がワインとつまみを持参してきたのだ。
「駅弁にひとつ手づくりのおつまみを加えると、レストランの味になるわね 」と大感激。
東海道線のグリーン車の8人乗り車両は、ゆったりできて、宴には最適だ。ああ、なんて贅沢な一日。
「でも飲みすぎ&大声は、周りに迷惑をかけるから厳禁よ!」
と、東京駅に着いたころには、酔って“説教鉄”になっていたオバ記者であった。
※女性セブン2014年7月3日号