広島が生んだ酒米「八反錦」で造られた純米酒が、「寶剱(ほうけん) 純米 八反錦」。料理の邪魔をしないきれいな味で「おかわりしたくなる」と評価が高い。「うまいけん」といわれるようになった宝剣酒造の定番品だ。
「日本酒、おまかせでと言われたら、最初に宝剣を出しておけば間違いない」と地元広島の飲食店で高く評価される。うるさ型の客を納得させる理由のひとつは、蔵内に湧く野呂山をくぐって自然に濾過された仕込み水。
「酒は辛く造ってあるけれど、最後の最後でフッと甘く感じるのはこの水のおかげ」と5代目杜氏の土井鉄也さん(38歳)。とはいえ、通称「どいてつ」が旨し酒を醸すまでは紆余曲折があった。
地元では伝説の元不良。パンチパーマで酒の配達を手伝っていたが、杜氏だった父が倒れて酒造りを引き継いだ。その頃、地元広島弁で「宝剣まずいけん」と囃し立てられたのが悔しかった。そこで、使用する酒米を地元の八反錦に限り、数多くあった銘柄を減らして、絞り込んで試行錯誤した。
食事を引き立てる食中酒を狙い、深い味わいがありながらキレる後味を追求し、日本一の蔵を目指す。
撮影■佐藤敏和
※週刊ポスト2014年6月27日号